少年たちが森に行ったら、美しい歌声が……
この奇妙なできごとは、とある森の中で起きました。その時、二、三人の友達が一緒でした。僕たちはサマーキャンプ(長期の夏季休暇の間に小中学生を対象として行われるキャンプ)に参加していたのです。キャンプ場はとても大きく、敷地の真ん中を道が通っていました。道の両側にいくつものキャンプ場がありました。僕たちは一番端っこの場所を割り当てられ、そこにキャンプを張りました。
その近くに道があり、上に向かって伸びていました。ある日、僕は二人の友達に「この道をたどっていったら、どこに行きつくか調べてみよう」と提案して、道を歩いていきました。
2.5キロメートルほど歩いた末に、僕たちはゴミ捨て場のようなところに至りました。そこに腰を下ろして休んでいた時、森の方から女性の歌声が聞こえてきました。
それは美しい歌声だったのですが、とても、とても不気味でした。まるで神話に出てくるサイレーン(船人を歌で魅了した半女半鳥の海の精)の歌を聴いているようでした。
僕たちは一種の放心状態になり、歌声のする方に向かって歩を進め、森の中に入っていきました。
やがて僕たちは空き地に出ました。歌声はそこから聞こえてきていたのです。その時、突如として一陣の風が森の中を吹き抜けていきました。僕たちは怖くなり、キャンプ場に向かって一目散に駆け戻りました。
あの時、誰が歌っていたのか、いまだに答えを知りません。