

警告:この話には出産に関する赤裸々な描写が含まれていますので、ご了承ください。
死産した赤ちゃんを救うために分娩室に入ってきた医師は……
現在、僕は33歳で、イギリスに住んでいます。僕には姉と妹がいるのですが、僕たちは三人とも難産で、出産の時どれだけ苦労したかを両親からよく聞かされました。姉と妹は逆子で、母は帝王切開を受けなければなりませんでした。僕は通常通り頭から出てきたのですが、その代わりに、出産中に一時死亡しました。
1983年のことです。当時、母は僕を妊娠し、出産を間近に控えていました。ある真夜中に、当時三歳だった姉が、就寝中の母のところにやってきて「お水を飲みたい」と言いました。母に言わせれば、それは奇妙なことでした。なぜなら、当時姉は幼かったので、真夜中に起きるようなことはなかったからです。母がベッドから出ようとした時、シーツが濡れていることに気づきました。掛け布団をはいだら、そこには恐ろしい光景がありました。シーツが血でびしょ濡れになっていたのです。
父は当時の状況を振り返って、こんな話を聞かせてくれました。「あの夜、俺たち(父母)は二台の救急車で病院に向かった。お前(この話の筆者・ガレスさん)を家につれて帰った時は、みんなが驚いたものだ。母さんのベッドが血だらけだったので、お前はもう助からないと諦めていたからな。」
病院に到着後、産婦人科医は父親に「胎盤が外れて赤ちゃんよりも先に出た」と告げました。ということは……僕の命が重大な危険にさらされていたということです。分娩室に入った母は医師の指示に従って力み、医師が僕を引き出しました。生れ出た僕は真っ青で、静かだったそうです。そして僕は血だらけでした。目の中や鼻など、至るところが血まみれになっていたのです。
看護師が父の腕から僕を取り上げ、サイドテーブルの上に置いて、「心拍がありません」と言いました。そして別の医師が呼び出されました。その夜は通常の担当医が非番だったので、別の医師にお呼びがかかりまりました。分娩室にやってきた男性は白衣に身を包み、胸に留められた名札には、僕の家族と同じ姓が記されていました。父はそれを見て驚きました。というのも、我が家の姓は非常に稀(まれ)なものだからです。国勢調査によると、イギリス国内でこの姓を共有している人は数えるほどしかいないのだそうです。ましてや僕たちは小さな町に住んでいるのですから、同姓の医師が同じ町に住んでいたら、いやでも耳に入ってきたはずです。
くだんの医師はすぐにその場を取り仕切り、僕の気道をきれいにする作業に着手しました。父にしてみれば、永遠と思えるほど長い時間が経ちました。最終的に僕は産声を上げ、看護師は安堵の吐息をつきました。父によると、肌の色が瞬く間に青からピンクに変わったのだそうです。次に医師は息つく暇もなく母の介抱にあたり、僕は父の腕に渡されました。
母はこの出産でたくさんの血液を失いました。それと、これはあとで分かったことなのですが、母と僕はめったにない血液型(RHマイナス)だったのです。出産の一か月前に、母の体が僕を「拒否」するようになったのは、この血液型が関係していたことが分かりました。
僕を蘇生することに成功した医師は、母の容態が落ち着いたので、父に近寄り、「お子さんの名前はもう決めましたか?」と尋ねました。父は「ガレスと名づけようと思います」と応えました。医師は母のベッドに掲示されていた姓名を見て、「それでは、ガレス(姓は筆者の希望により非公開)ですね?」と尋ね、父はうなずきました。医師は「じゃあ私と同姓同名ですね」と言って、ニッコリ微笑みました。
僕を救ってくれた医師は分娩室から出ていきました。翌朝、母が僕を抱いている間に、父は看護師に「昨夜のお医者さんと話ができませんか? もう一度、先生にお礼を言いたいのです」と尋ねました。残念ながら、誰もこの医師を探し出すことができませんでした。彼は「非常勤」として到着を記録したのです。しかし、産婦人科から出ていく時、記録を残さなかったのです。
・天使現象は、あると聞きますね。この手の話は、ドリーン バーチュが持ってますね。
天使現象さん(2017年5月7日)