ドイツとオーストリアの国境にまたがる「ベルヒテスガーデン・アルプス」に、ウンタースベルク(直訳:山の下)と呼ばれる、標高1,973メートルの大山塊がそびえ立ち、その威容を誇っている。映画『サウンド・オブ・ミュージック』にも登場したこの山は、オーストリア・ザルツブルクを訪れた観光客にとって、人気の観光目的地となっている。

だが、息をのむような自然美とは裏腹に、このあたりは奇妙な伝説に結びつけられており、数々の不思議現象が報告されているところでもある。

映画『サウンド・オブ・ミュージック』にも登場した壮麗な山・ウンタースベルク。この美しい山は不思議現象の温床でもあった!

アドルフ・ヒトラーは、この神秘的な山に魅了され、ウンタースベルクの近くに位置するベルクホーフ山を1920年代に買収して、山荘を建設した。ヒトラーはこの山荘に高性能の望遠鏡を設置し、ウンタースベルクを熱狂的に観察したという。ヒトラーは、この山に超常的なエネルギーや生き物が潜伏していると信じ、その力をふらちな目的に利用しようと考えたのだ。


ベルヒテスガーデンの近郊にあった別荘でくつろぐエバ・ブラウンとヒトラー

この山には本当に超常的な秘密が隠されているのだろうか? この疑問に対する答えは定かではないが、数々の奇妙なできごとがこのあたりで報告されていることは事実である。

頻繁に報告されている不思議現象の一つに「瞬間移動」がある。ハイキング中に意識を失い、数分後、または数時間後に、見覚えのない場所で気を取り戻した、というような体験談が多く報告されている。そんなわけで、この山には人をテレポートさせたり、時間をウォープ(歪曲)させたりするボルテックス(渦巻き)が存在するのではないかとの説がささやかれている。その一方で、UFO 誘拐説を唱える人もいる。実際、この地域では未確認飛行物体の目撃談が数多い。

そんな体験談の中でも際立っているのは、オーストリアの作家、スタン・ウルフが語ったものである。ウルフ氏は、タイムスリップを体験する目的で、友人とともにウンタースベルク山を訪れたのだが、山中のそこかしこで彼らの腕時計が秒単位、または分単位で動いたという。二人はとある洞窟の中で男性の一団に遭った。彼らは自分たちが第二次大戦時のナチス兵だと語った。彼らはまだ若く、悪名高いナチス・ドイツ親衛隊の将軍、ハンス・カムラーの司令下にあると述べた。奇妙なことに、兵士たちは、終戦後、長い年月が経っていることに気づいていなかった。彼らは戦争が終わってから数か月しか経っていないと信じていたのだ。ウルフ氏は、この洞窟内で時間が普通よりもゆっくり経過しているのではないかと推測している。


ナチス・ドイツ親衛隊の兵士(上記の話とは関係がありません)

ウンタースベルク山では人の蒸発事件が後を絶たない。何百もの人々がここで行方不明になり、二度と見つかっていない。このような事件があまりにも頻繁に起きるので、地元の新聞は山で消息を絶った人々に関する記事を定期的に掲載している。例えば、2001年にマックス・ブランドル氏(39歳)はハイキング中に行方不明になった。7か月にわたり、山中をくまなく捜索したのだが、同氏は見つからなかった。2008年に消息を絶った若いカップルの場合、ヘリコプターを使って徹底的に探し回ったのだが、結局二人が見つかることはなかった。

だが、すべての人々が行方をくらまし、それっきりになったわけではない。中には帰還を果たした人もいる。1738年に山中で姿を消した狩人、ミヒャエル・ハルゾガー氏はその一人だ。行方不明になってからちょうど一年後、彼は朦朧(もうろう)とした状態で、自分の告別式に姿を現した。彼は、自分がどこに行っていたのか、そしてそこで何を体験したのかについて語ることを頑(かたく)なに拒否した。だが、ザルツブルクの大司教にだけは話をすることに同意した。大司教はハルゾガー氏の話からあまりにも衝撃を受けたので、辞職し、二度とその話に触れることはなかったという。

それに輪をかけて奇妙なできごとが1858年に起きた。披露宴に参列するために、一団が山道を歩いていたら、岩の壁が開き、白髪の老人が現れて、自分についてくるよう人々に促したという。一行が老人について歩を進めていったら、奇妙な地下都市に出た。そこは黄金や宝石が満ちあふれる絢爛豪華なところだったという。一行はごちそうや酒をふるまわれ、眠りに落ちた。目覚めた時、彼らは別の場所にいた。そこにいた人々は奇妙な服をまとい、奇妙な言語を話していたという。最終的に一行は披露宴にたどり着いたのだが、そこは様子が変わっており、神父も見慣れない人物であった。一行は神父に事の次第を説明し、他の参列者がどこにいるのかを尋ねたのだが、神父は彼らが何の話をしているのか、ちっとも解せなかった。このことを不審に思った神父が、後日この件について調べてみたところ、披露宴に参加することになっていた一行がその付近で行方不明になったことが判明した。だが、一行は100年以上も前に姿を消したのだ!

最近では、1987年に不可解な事件が起きた。ミュンヘンからやってきた三人の旅行者(そのうちの二人は夫婦)が山を探索している時、行方不明になった。三人に関して残されていたものは、放棄された乗用車のみで、その他のものは、広範な捜索にもかかわらず、何一つ見つからなかった。しかし、それから三カ月後、行方不明になった三人が親戚に電話をかけてきた。三人の言うことには、その時点で彼らは紅海を航海中の船に乗っていたという。その船はエジプト・アレクサンドリアに向かうところであった。三人は、三か月の間どこに行っていたのか尋ねられたのだが、誰一人として答えることができなかった。しかも三人は、なぜ自分たちがその船に乗っているのかも説明できなかったという。実のところ、三人は、自分たちが長期に渡り行方不明になっていたことさえ知らなかったのだ。

その壮麗な姿が訪れる人々を魅了してやまないウンタースベルク山であるが、その一方で、ここは謎と不思議現象の温床でもある。これらの現象の陰に何が潜んでいるにせよ、そのミステリーが解明されることは永遠にないのかもしれない。

下の動画でウンタースベルクの景色をお楽しみください。

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