これはあるイギリス人男性の体験談です。

学校が終わり、迎えの車を待っている時、ふと奇妙な考えが頭に浮かび……

これはおよそ5年前に起きたできごとなのですが、いまだにまざまざと覚えています。なぜなら、あまりにも奇妙なできごとだったからです。

当時、僕は高校生でした。僕の通っていた学校は、家からそれほど離れていなかったのですが、それでも両親は車で送り迎えをしてくれました。

学校が終わったら、いつも裏門から出て、農場に隣接する道まで歩いていったものです。そのあたりは交通量が激しくなかったからです。母がそこまで迎えにきてくれました。学校からその待ち合わせ場所までは徒歩で5分ぐらいかかりました。

というわけで、いつも通り、農場のそばに立ち、車が時おり通り過ぎるのを眺めながら、母が来るのを待っていました。その日、母はいつもよりも遅れ気味だったので、いろいろな考えが頭に浮かんできました。

特にこんな考えが浮かんだことをハッキリ覚えています。それは「もし誰かに学校までの道順を聞かれたら、どう答えよう?」というものです。「ここから学校までの道順は分かっているけど、もし突然聞かれたら、多分うろたえて、しどろもどろになってしまうだろう」と思いました。

というわけで、誰かに道を聞かれた状況を想定して、頭の中で道順を教える練習をしました。

それから一分も経たないうちに、青の光をピカピカ輝かせた救急車が角を曲がって僕の方に走ってきました。救急車は僕の前で停まり、運転手が慌てふためいた様子で「ここから学校の裏門までの道順を知っていますか?」と尋ねました。

僕はちょっと混乱しましたが、うろたえることはなく、ほんの30秒前に練習した通り、道順を教えました。運転手は礼を言って、学校まで車をぶっ飛ばしていきました。

これは後で分かったことなのですが、その日、ある生徒が三階の校舎から投身自殺を図ったのです。その子はしばらくの間、重体だったのですが、結局一命をとりとめ、回復しました。今では元気にやっているそうです。

もしあの日、道案内をする人が見つからず、救急車が遅れて到着していたらどうなっていたでしょう? ひょっとしたら手遅れになっていたかもしれません。

あの日僕は、ちゃんとした理由があったから、道順を教える練習をしたのだと思いたいです。

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