T.A.さん著『未来が見える少年』の第2部をお届けします。第一部はこちらです。


ずいぶんと長い間考えていたのにS.H.君の話した未来予知は、少し期待外れ。そこで逆に私から、ひとつ提案をしました。「ここまでの君の超能力は、嘘か本当か分からないよ。すぐに証明できる予知をやってみない?」と言いながら、私は自分の腕時計を外して、左手で持ちます。そして

(私) 「今からちょうど1時間後に私が何をやっているか予知して見て。できるかな?」
(S.H.君) 「できます」

2人で、私の腕時計をのぞき込みます。時刻は10時41分で秒針が40秒を回った所でした。(私) 「じゃあ、私のこの腕時計の秒針がちょうど上に来た時刻の1時間後、つまり11時42分0秒ぴったしに私は何をやっているのか?予知してね!」
(S.H.君) 「はい」

そして2人で、秒針が真上の0秒を通過するのを確認しました。念のために、もう一度
(私) 「ほかの時計じゃだめだよ。この私の腕時計が11時42分0秒ぴったしの予知だよ」
(S.H.君) 「はい」
と言うや、また私の方に向きかえり、じーっと見つめてきます。さっきと同じです。気は乗りませんが、超能力ごっこはこれでおしまい。最後なので、私も彼の方に向き、目をじーと見ます。

このままの姿勢で私は、さっきの超能力ショーの番組名を思い出すことにします。ですが、S.H.君の瞳(ひとみ)を覗き込んでいると、いろいろな(別の)記憶が出てきました。ゲストが喜んだり、驚いたり、泣いたりしているシーン等です。しかし有名人の筈なのに、ゲストの大半を(高3の私は)知りません。その出演者たちの名前も出てきません。番組名も分からないままでしたが、番組進行役の名前をぼんやりと思い出します。なんと目の前の男の子と同姓同名でした。一番最初にS.H.君が名乗った時に、聞き覚えがあると思ったのは、この番組の進行役と同じ名前だったからです。私の知り合いではなかったけど、それまでのもやもやがひとつ解消しました。「S.H.君の親戚かも知れない。後で、鎌(かま)をかけてみよう」と思っている時に、喉を強くこするような呼吸音が聞こえてきて私は、また我に返りました。

 

目の前にS.H.君の顔があり、うなり声にも聞こえる呼吸音「う〜、う〜」を発していました。今にも、泣き出しそうなので「もういいよ、やらなくて。やらなくていいよ」と止めに入りました。すると
(S.H.君) 「かいだん」
(S.H.君) 「かいだん」

(S.H.君) 「かいだん、にいる」

(私)  「え!? ニール?」 何を言いたいのか、分かりません。

(S.H.君) 「かいだん」、「にいる」

(私) 「階段に居るの? 階段で、私は何をやっているの?」、しかし
(S.H.君) 「かいだん、にいる」

(私) 「階段なら、上ってるとか、下りてくるとか? なんで、そんな所に居るの?」、しかし
(S.H.君) 「何もしてない。ただ、階段にいる。階段に立ってる」

やがて、何を訊いても、"階段にいる"としか言わなくなりました。これ以上やると、本当に泣き出してしまうでしょう。もう超能力ごっこを中止することにしました。

彼の予知は、私が1時間後に"何をしているか"の答えになっていません。それに「階段にいる」は日本語としても正しくないでしょう。所詮、相手は小学生。この勝負は、私の勝ちでした。

それでも勝敗を決定的なものにする為に、最後の質問をします。

(私)  「それは、私のこの腕時計で11時42分ぴったしに起こるんだね?」

それまでの流れから"はい、そうです"と彼は返答するはずでした。が、意外な答えが返ってきます。しかも数秒前まで泣き出しそうだった表情は消えていました、私を諭(さと)す様な口調で

(S.H.君)『あのう、未来って1つじゃないんです。いくつもあります。それに(自分で)変える事もできるんです』…(文頭で示唆した"未来の仕組み"が、これです)。

まさに唖然とするような答えでした。いま思いついた"子供の言い訳"とは思えません。完璧な返答。知的な印象が全く無い(もしも、ご本人がこれを読んでいたらゴメンナサイ)その小学生が、こんな言葉を口にする事自体が想定外でした。勝敗は、私の逆転負けでしょう。気がつくと、むこうからI君が歩いてくるのが見えます。もうお遊びは止める事にしました。小学生の相手をしていて、ずいぶんと無駄な時間を過ごしてしまった。最後にS.H.君の方をちゃんと向いて

(私) 「あ、I君が戻って来たよ。長い時間、ありがとね」。

彼の超能力ごっこの演技は素晴らしかったのですが、 "未来予知だけは、まだまだ"だと思ったので、

(私) 「でも、僕の将来にはちょっとがっかりしたよ。社会的に成功していないし、有名にもなっていない。外国にも行きたかった…」。

と、まだ私が話し終わっていないのに、
(S.H.君) 「大丈夫です。大丈夫です。すごく成功します…、Ъ!£〜\§¢??々¶〜」
と饒舌(じょうぜつ)にまくし立てていました。興奮して途中から何を言っているのか、聞き取れません。小学生が思いつきそうな誉め言葉をやみくもに並べていました。声のトーンから、あきらかに嘘を言っているのは分かります。でも、それを責める気にはなりません。その小学生とI君に手で"バイバイ"をして、私はもう退散することにしました。

数メートル進んだ所に段差があり、下駄箱ルームより床が15cm位高くなっています。

そこまで歩いて行き、私はクルっと振り返りました。もうS.H.君を見下ろす高さです。

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(私) 「君、凄いね。才能を生かして、将来は有名になるよ」と。そうして、その男の子は、その後ほんとうに才能を生かして、将来は有名になりましたとさ。未来が見える少年とは、私の事でした…と、言うオチではありません。

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私は本当にその子(S.H.君)の才能に、それは演技力なのか対話能力なのか分かりませんが、感服したのです。最後に自分の心に浮かんだ考えを伝える事にしました。と言うか、脳裏には彼と同姓同名の人気テレビ番組進行役のイメージがずっとあったので、その叔父さん…もうその時、私はS.H.君がその進行役霊能者の親戚だと考えていた…と同じ仕事をしていると思ったのです。で、実際はこう言いました。下駄箱ルームの低い位置から、じっ〜と私を見上げている彼に向かって

(私) 「君、君は本当に凄いね。僕が今まで生きてきた中で、こんな凄い才能を持ってる子は初めてだよ。その才能をいかして、君は将来、ぜったい有名になるよ。頑張ってね」と、言ったのです(予言者のような口調に私がなっていました)。

超能力があるのかどうかは分かりません。でも大人(である私)と30分以上話し続けて、まったく怯(ひる)む事なく対峙していました。会話には最初から最後まで論理的な矛盾点がなかったのです。S.H.君の演技力と対話能力は、比類なきものだと感じました。小学生でこの話術レベルなのですから、最悪でも将来"有名な"詐欺師にはなれるでしょう。もし私のこの予言が外れたら、「未来は、1つではない。いくつもあるんだ」って言えば良いだけです。彼の才能ですが、"超能力"ではなくて、別の何か(どう表現するのか、その時は分かりませんでしたが、今ならば"スピリチュアル・カウンセラー")で有名になるのも知っていました。私はS.H.君への予言を残し、そのまま下駄箱ルームを後にします。これで終わり(の筈でした)。

校舎に入り一階の廊下を歩いていると、走って追いかけてきたI君が、また私を呼び止めます。私は、何か忘れ物でもしたのかと思いました。廊下は騒音でうるさかったので、話さずに両手を使って”どうしたの?”のジェスチャーをします。すると、I君は私の耳元で

(I君) 「彼の能力は、本物だよ!」

私は、その日一度も、S.H.君の超能力が嘘だ、とは言っていません。そんなそぶりも見せていません。それに、超能力ごっこをやっている時、I君はそこに居ませんでした。いったい何を言い出すのだろうかと、思っていると

(I君) 「僕たち(たぶん彼のご近所さん)は、みんな信じてる。当たるんだ。本当に超能力が使えるんだって…」と続けます。

私は、変な気持ちになりました。あの小学生は、まだ下駄箱ルームに1人で居るでしょう。わざわざ私を追いかけてきてまで、そんな事を言う必要があるのだろうか。私は、I君が早めに、下駄箱ルームで待ってる小学生の所へ戻るべきだと考えたので、手短かに彼の耳元で

(私) 「あの子とずっと話して、矛盾点は無かった。実は途中まで、信じていたんだけどね。え〜と、僕はえ〜と、え〜と、嘘だと思うよ。じゃ〜ね」と、I君の耳元でささやいて、その場を後にしました。なにか嘘だという決定的な証拠をつかんだ筈だったのですが、とっさの返答で、思い出せなかったのです。

そのまま廊下を歩きだした後で、(S.H.君に)超能力番組の真似してただろ、を言い忘れた事を思い出しました。これこそが、嘘だと思った根拠です。数年前に放送していた超能力番組の真似をしていた訳だし、番組進行役がS.H.君と同姓同名なのも引っ掛かります。すこし変わった苗字だったので、やはり少年はあの番組進行役の親戚の可能性が高いです。I君は、あの番組を深夜だったので見ていなかったのだと、自分なりに解釈しました。

でも、そんな事、どうでも良くなっていました。私は、高校生活最後の貴重な自由時間を効率的に過ごさなければ行けません。ただ、"11時42分の時刻を忘れないように!"それだけを考えていました。未来が変わってしまうかも知れないので、予知内容は敢えて考えないようにします。つまり時刻だけを考えて、S.H.君の事も、I君の事も思い出さない様にしていました。

私にとって最後の文化祭。初日の朝から、つまずきました。遅れを取り戻すべく、1年A組の展示ルーム(教室)からスタート。教室に入り展示作品を見るふりをしながら、好みの生徒を見つけては、その作品の説明を求めます。上級生に質問されるので、無視をする1年生は居ません。熱心に説明してくれます。私は時々、チラッ、チラッと腕時計で時刻を確認します。しかし、それをやると、説明してくれている女子生徒との会話が止まり、心理的な距離がそれ以上、近づかなくなるのです。脳裏にも、"相手との会話内容"と"時刻の11時42分"が重複して現れ、会話を上手く誘導していけません。これでは、いつまでたっても目的が達成できないでしょう。当時の腕時計にはアラーム機能なんてありませんから、少し困りました。

そこで次の1年B組の展示ルーム(教室)に入る時から、手順を変えました。教室の扉をくぐる時(入る時と出る時)に、"11時42分"と口で言う事にしたのです。これだけで充分でした。もう教室内にいる時は、時刻の事を考える必要はありません。これで目的(1年女子生徒との親交を深める)に集中できるようになりました。

教室を出る際に"11時42分"と言います。同時に腕時計を一瞬見ます。次の教室に入る際も小声で"11時42分"と言います。それから、教室内の展示品をよく見て、質問をでっちあげて、話しかける相手を探します。

こうして順調に任務をこなしていました。何番目かの教室で説明を受けている時に、誰かが突然「なんだ。T.A.(私の名前)、お前こんな所にいたのか?」と。私は声のする方向を見ます。教室の反対側で、3年の男子生徒が大声を出しています。

(男子生徒)「A子が、お前のこと探してたぞ」

A子と言うのは、ボーイッシュで乱暴な言葉づかいをする3年女子生徒ですが、私の嫌いなタイプではありません。

(私) 「どこ?」
(男子生徒)「3階の〇〇教室!」

彼に「おっ、ありがと」と言いながら、私は走り出しました。ところが教室を出ると、廊下は人や物(立て看板など)でイッパイ。その間を、障害物競走の要領でなんとか走り抜けていきます。

今これを見ている若い読者は、"なんで走るのか"分からないかも知れません。すこし説明します。今と違って、あの頃はスマホや携帯電話はありません。パソコンもないのでメールは出来ません。高校で誰かと会う為には、(1)休み時間に相手の教室に行く、(2)放課後に相手が所属する(部活の)部室に行って(どこに居るかを)尋ねる、(3)下校時刻に正門で待ち伏せをする、以外に方法がないのです。でも文化祭期間中は、これが出来ません。あの高校には1000人近い生徒が在籍していました。大急ぎで、3階の〇〇教室近くまで行き「A子、見なかった?」を連発しながら、探さなければ、文化祭の期間中に彼女と会える確率は、著(いちじる)しく低くなるのです。と言うか、別の場所にA子が移動してしまえば、おそらく会えないでしょう。だから早く3階に行かなければなりません。これが、"なんで走るのか"の理由です。

もちろん、会いたくなければ、走る必要はありません。でも、(授業のある日ではなく)文化祭の初日に私を探しているのは、何か特別な理由がある筈です。私も、この機会を逃したくありません。それで、全力疾走をしているのです。人をかき分けながら、廊下を進みます。階段も1階から3階までいっきに駆け上る…つもりだったのですが、上りきる前に息が切れてしまいました。「ゼー、ゼー、ゼー」。階段の途中(3階の少し手前)で、つっ立ったまま息を整えていました。

この時「そうだ、いま何時だ?」と腕時計を確認します。なんだか、酸欠で頭がボーっとしています。時刻は、11時41分40秒を回った所でした。「あれれ。さっきと同じだ」つまり、S.H.君と一緒に見た時と、同じ文字盤表示になっている、と錯覚しました。正しくは、1時間ずれていたのですが、とっさに分からなかったのです。と同時に、「そうだ。S.H.君の(予知した)時刻は、何時何分だったっけ?」、脳の酸素不足の為か、すぐに思い出せません。

頭が少し、混乱していました。そうこうする内に、時計の秒針が真上を通り過ぎます(つまり11時42分0秒になった時)、「そうだ。今がそうだ。11時42分だ」と思い出したのです。

S.H.君の予知内容を思い出す前に、「アハハハ、予知は外れた。僕はこの時刻に、何もしてなかったんだ」と、すこし勝ち誇った気持ちになった直後(1秒後位)、彼が「何もしてない。ただ、階段にいる」と言ったのを思い出しました。

「階段に、いる」

が彼の予知でした。まさにこれを示していたのです。一瞬、ゾッとしました。私は、階段の途中に、つっ立っているのです。「当たった?」、「まさかね」、「でも当たってる」、「いや、だだの偶然だ」、自問自答します。それから、その場所へ約10分間は(手すりにも掴まらず)立っていました。ボーっと、つっ立っていたのではありません。脳内は、もの凄い速さで、その日の出来事を回想していました。私が訊いてもいないのに「フォルクローレ」の事をS.H.君が語り始めた瞬間から。いや、違う。私が、I.君と一緒の小学生に声を掛けた瞬間から、いま階段に自分がつっ立っているこの間の出来事を、超スピードで何度も何度も思い返していました。

階段に立っている間ですが、気が散らないように、かるく目を閉じていました。多くの人が私の横を通り抜けていきます。少なくとも2人は、私の知り合いでした。最初は、3年女子(だったと思います)。通り過ぎる時に「あっ、T.A.君(私の名前)」と言っていました。私は、目を開けません。次は、後輩女子「あっ、先輩。こんな所で何をしているんですか」と。私は目をつむったままです、その後輩は「せんぱ〜い、T.A.せんぱ〜い」と言いながら、通り過ぎて行きました。階段の途中に、目をつむったマグマ大使よろしく(現代語訳:お台場のガンダムのように)立っていました。こんなのは人生、最初で最後です。下駄箱ルームでもそうでしたが、(他人が見たら)さぞかし変てこな光景だったのだろうと、今も思っています。

その時の私の脳内:「S.H.君は、本当にフォルクローレを現地で見ていたのかも知れない」。「過去に意識をとばして、本当に"昔から"見ていたのかも知れない」。そして、「私が心の中で『フォークダンスなんか見て、面白いわきゃないだろ。変な子供だ…』と思っただけなのに、具体的に即答してきたのは、S.H.君にテレパシー能力も有るという事なのだろうか…」。でも、「もしも『死んだ人と話が出来る』のなら、私の(いや全人類の)死生観が変わってしまう…」。「私の背後霊は、どうして女性2人なのだろう?…」考えが止まりません。

多くの生徒が行き来する階段途中に立っているのは、危険なので移動する事にします。3人目の知り合いが来て、目をつむっている私を突き落とすかも知れません。S.H.君の事を回想しながら、A子の居た教室へ、とぼとぼと歩いて行きます。しかし、もう誰もいませんでした。文化祭の期間中は結局、A子に会えずじまい。

それだけでは、ありません。文化祭の間はずっと"S.H.君を発見した"ところから"私が階段にいる"ところまでを何百回も繰り返し、自己分析しながら、思い出していました。だからこそ今(2018年)、これほど具体的に一挙一動までを、文章で描写できるのです。で、その時の私が出した結論ですが「階段の件は偶然。その他の超能力はテレビ番組を模倣しただけなので、たぶん当たっていない筈だ」です。

ただし偶然とは言え、I.君に合ったら一応「一つだけ予知が当たった」と報告するつもりでした。でも、その日は会えず。翌日も、翌々日も会えず。で、とても不思議な事に、文化祭が終わると、(私はそれほど親しくなかったので)どの生徒がI.君だったか分からなくなっていました。3年男子に似たタイプがいっぱいいたので、S.H.君が隣に居ないと分からないのです。I.君の方から私に声を掛けてもらおうと、勝手に思っていましたが、そのまま卒業式まで話はしていません。卒業後2回、私は同期会に参加しましたが、I.君には会えませんでした。あれは、一期一会の出来事になりました。

この階段の件は、その後、誰にも話しませんでした。「当たっていた」と話せば、負けを認める事になると思ったのです。でも、気になって仕方ありません。そこで、クラスメイトや同学年の友人に、中学生時代にやっていた深夜番組の超能力ショーの事を訊いて回りました。番組名を知りたかったのですが、誰一人として、その番組を見ていないのです。加えて、シャボン玉ホリデーの事も訊いてみました。こっちは知っていました。それどころか小学生の時、子供はあまり見ていない番組なのに、質問した友人全員(私と同年齢)が見ていたのです。これも、逆に不思議な感じがしました。

高校を卒業してからはこの事件の事をあまり考えなくなりましたが、「懐かしのテレビ番組」特集などで「シャボン玉ホリデー」を見るたびに、「シャボン玉」のような顔の彼を思い出しました。未来が見える少年との『出会い』の話は、以上です。

時間旅行とは関係ない内容ですが、気になる方もいるでしょう。A子の話をします。文化祭の代休が開けた火曜日(だったと思います)、休み時間にA子の教室まで会いに行きました。

(私) 「お〜い、A子」
(A子)「おっ、なんでお前がここにいるんだよ」

(私) 「何の用?俺の事、探してただろ?」
(A子)「探してねえよ。こんな所に、来るなよ」

(私) 「探してただろ。文化祭で」
(A子)「知らねえよ…」

(私) 「文化祭の初日の午前中に、A子が探してるって、聞いたぞ」
(A子)「…」

(私) 「3階の〇〇教室」
(A子)「あっ、そうだ。何か訊こうと思ってたんだ。でも、忘れた」
(A子)「もういいよ、出てけよ。ひとの教室に勝手に入ってくんなよ…、出てけよ!」
(私) 「なんだよ、じゃ〜な」。

みたいな会話をして、A子の教室を後にした。前から嫌な(女だけど)野郎だと思ってたけれど、ほんとに嫌な野郎だった。それを再確認できた。

平成17年頃? … ご近所の丸山さん

高校を卒業してから30年以上経っていたので、もうS.H.君の事を思い出す事はありません。ある日の朝、配達された朝刊(紙の新聞)を取りに行きました(正確な年月日は忘れました)。郵便受けから抜き取った新聞を手にして、自宅の正門前に立っていると、ご近所の丸山さんの家から派手な色の車が出てきました。

この丸山さんと言うのは、公道(5m幅)を挟んだお向かいから5軒右隣の一戸建てに引っ越してきた男性です。半年前なのか2年前なのか、いつ引っ越してきたか迄は知りません。ある日、私がその家の前を通ったら、「井川」という表札が「丸山」に変わっていました。時々、男の人が出入りしていたので、その人が丸山さんなのだろうと思っていたのですが、引っ越しの挨拶をするほどの距離ではないし…近くで顔を見た事はありませんでした、その日までは。

その丸山さんの家のガレージから、派手な色の…間違えました…超・超・超ド派手な色のアメ車が出てきたのです。こんな色の車は、生まれて初めてです。ゆっくりと、私の方に近づいてきます。丸山さん本人が1人で運転していると思ったのですが、髪の長い女性でした。十字路を曲がる為なのか、車は減速してちょうど私の前で1度止まりました。運転席側の窓が開いていて、かつ左ハンドルだったので、わずか50cmの距離で目が合います。

ご近所なので「初めまして」の意味を込めて、私はコクリと頭を下げます。相手も同じ様に、品良くコクリと頭を下げます。運転席に座っていた方は女優?でした。すごく有名なタレントさんで、よくテレビで見ている女優?だと、最初は思いました。宝塚の男役をやってる女優さんだったかなと。「どうして、丸山さんの家から出てきたのだろうか?!」、「誰だっけ?!」と考えている内に、運転席側の窓は開いていたのではない。その女優さんは、近所の家の前につっ立っている私に挨拶(あいさつ)する為に、わざと窓を開けていたのだ、と気がつきました。つまり、この女優さんは丸山家の居住者だ、と私は理解したのです。で、その次の瞬間です、車が左折して見えなくなった時(たぶん頭を下げてから5秒後位)に、「女優じゃなかった、美輪明宏だ」と声を出している自分がいました。

こんな早朝です。これから仕事に向かうのでしょうけど、どうして丸山邸から美輪明宏が出て来たのでしょうか。丸山さんと美輪明宏は、どういう関係なのでしょうか?

僅か十数秒の間に、余りにも大量の情報が脳裏に入ってきたので、私の大脳はオーバーロードしてしまいます。朝刊を手にしたまま、室内に戻ってきたのですが、何が何だか分かりません。頭は、ボーっとしています。

その時に、またもやシャボン玉ホリデー(TV番組)を思い出しました。正確に言うと、その当時に白黒テレビで見ていたバラエティー番組すべてです。とても変わった(外見は)女性みたいで、(名前は)男性のタレントが良く出ていました。「丸山明宏」という歌手です。通称は、シスター・ボーイ。で、確かその「丸山明宏」が途中で改名して、「美輪明宏」になった様に記憶しています。関係は分かりました…たぶん美輪明宏は芸名で、本名が「丸山」姓なのだろうと。

平成17年頃? … 丸山さんのお友達

それから数日後あるいは数週間後だったかも。昼間のテレビに丸山さん(美輪明宏)が出ています。番宣(テレビ番組の宣伝)でした。普段ならチャンネルを変えるのですが、一応ご近所さんなので画面を注視します。ご自身が出ているスピリチュアル系の深夜番組の紹介をしていました。

で、そこに丸山さんが自分の友人だと言う肥満体の霊能力者が出ていたのです。「この人は本物です」と言うのですが、私は笑いながら「なに言ってるんだろ!?」。

そもそも、当時の美輪明宏氏は「自分の前世が天草四郎(あまくさしろう:江戸時代に16歳で"島原の乱"を導く大将だった少年)だ」と言い切ってました。私(T.A.)は、まったく信じていません、「そんなのは嘘っぱちだ」とね。

話を、丸山さんのお友達に戻します。その当時(も、それ以前も)、こんなブヨブヨと太った霊能力者を私は見た事がありません。それに、霊能力者ならば、眼光(がんこう)が鋭い筈なのに、こいつは丸顔でニヤニヤしています。とにもかくにも、霊的な印象が全く無い(ご本人がこれを読んでいたらゴメンナサイ、今の私は妄信しております)のです。

「霊能力者」と「ヨガ行者」の外見は似ています。痩せこけて、目はやや窪み、なんとなく暗い感じを漂わせていなければなりません。でも、この霊能力者は、その全てがまったく逆の外見を呈していました。美輪明宏さんは、いったい何を考えているのだろうか?

その当時ですが、宜保愛子(という霊能力者の)ブームが過ぎ去り、霊能力番組では視聴率がもうとれなくなってきた時期です。こんな番組は、すぐ放送打ち切りになるでしょう。でも、ご近所さんなので、見てあげる事にしました。放送時刻とチャンネル番号をポストイット(粘着メモ用紙)に書き取り、ブラウン管テレビの枠に貼っておきます。

『未来が見える少年』第3部を読む

夢の実現を引き寄せる最短ルート

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