

この話は1988年2月25日付けの『ニューヨークタイムズ』紙に掲載されたものです。題名の「転禍為福」とは「災い転じて福となす」という意味です。
強迫神経症に悩まされている青年が絶望してライフル銃を口に入れ、引き金を引いたら……!
1983年のカナダ・バンクーバー。当時19歳だったジョージ(プライバシー保護のため苗字は公開されていません)という名の青年は強迫神経症を患っており、一日のうちに何度も手を洗ったり、シャワーを浴びたりする衝動に逆らうことができませんでした。
そのため彼はバンクーバー・ショーナシー病院のレズリー・ソリオム医師の治療を一年以上受けていました。この症状のせいで、彼は大学を中退し、仕事も辞めざるを得なかったといいます。
ある日、ジョージさんは極度のうつ状態になり、母親に「僕の人生はボロボロなので自殺したい」と告げたといいます。すると母親は「お前の人生がそれほどボロボロなら、とっとと自殺するがいい」と突き放しました(!)
そこで彼は自宅の地下室に足を運び、口径0.22インチのライフルを口に突っ込み、引き金を引きました!
脳の中に放たれた弾丸は左前頭葉に埋め込まれました。外科医がその弾丸を取り除き、ジョージさんは一命をとりとめました。
それから3週間後にかかりつけのショーナシー病院に移された時、強迫神経症はほぼ完全に治っていました。この症状を引き起こしていた脳の部分が弾丸によって破壊されたのです。しかも損傷を受けたのはその部分だけで、彼の知能指数は前と何ら変わりありませんでした。
退院したジョージさんは成績がオールAの優等生となり、新しい就職先も見つかったといいます!