
タイムトラベルZ

どんでん返しが続出、ストーリーのアクロバットを楽しめる





IMDb(国際映画データベース)のサイトでユーザーが本作に下した評価は10点満点中なんと4.7点! 日本のアマゾンに掲載されているレビューを読んでも低評価が目立ちます。「筋が分かりにくいから」という理由が多いようです。確かにこの作品はフラッシュバック(過去の場面をはさむこと)やフラッシュフォワード(未来の場面をはさむこと)を多用しており、過去・現在・未来が激しく交差するので、注意して見ていないと混乱し置いていかれるかもしれません。というのも、闇市に出回っている睡眠薬を飲むことによって意識が過去や未来に飛ぶ(実質的にタイムトラベルする)という設定になっているからです。とは言え、難解なことで悪名高い『プライマー』に比べたら、はるかに分かりやすいと思います。
かく言う私も最初の15分ぐらいはちょっと退屈してしまい、後どのくらい時間が残っているのかを確かめるためにリモコンのボタンを押して場面を一時停止しました。でも、話が調子に乗ってくるにつれてストーリーに引き込まれ、クライマックスに達するころにはハラハラドキドキしている自分がいました。どんでん返しが続出する「ストーリーのアクロバット」を楽しめます。まだ起こっていない犯罪を防止するために主人公が奮闘するという意味で『マイノリティ・リポート』系の作品です。最後にすべての伏線が回収され満足感を味わうことができますが、筋が複雑なため見逃している点があるかもしれないので、複数回鑑賞する価値のある作品と言えるでしょう。
低予算のため有名な俳優は出ておらず、インディー(独立プロ)系作品特有の地味な印象は免れないものの、出演者の演技にそん色はありません。特に主演のライアン・マンザートは、人間的に欠点があるものの好感度の高いヒーローを熱演しています。監督のブルース・ウェンプルにとって初監督作品のようですが、巧みな編集やダイナミックなカメラワークも相まって、演出にぎこちなさが感じられない秀作に仕上がっています。ちなみに2022年に公開が予定されている同監督の新作『ザ・トゥモロー・ジョブ』は、泥棒チームがクスリを飲んで未来の自分自身と意識を交換し、未来の秘密を盗むという展開になるようです。本作でZ薬の開発者を演じたリック・モンゴメリー・ジュニアが同じ役名で出演するので、続編という位置づけになるのでしょう。こちらも面白そう! 今後もこの監督からは目が離せません。