これはイギリスの女性・Lさんの体験談です。
2002年のことです。当時、私は元カレと暮らしていました。彼は本当に最低な男で、二人の関係は終わりにさしかかっていました。頻繁に口喧嘩をしたのですが、そのたびに彼は悪意をむきだしにし、何日もその状態を引きずりました。仲直りに努めたのはいつも私のほうでした。
ある日、彼は屋根裏部屋で、テレビのアンテナをいじくっていました。アンテナの位置がずれてしまったのです。私は階段の下から「このチャンネルはよく映っているけど、このチャンネルはまだ……」というように呼びかけていました。
やりとりをしている最中、彼が私の言葉を聞き取れなかったことがありました。そこで私は屋根裏部屋の近くに行くために階段を上っていくことに。階段の上までさしかかったとき、寝室のベッドの上に「誰か」が腰かけているのに気づきました。それは女性で、私に背を向け、身じろぎもせずに窓に向かっていました。言うまでもありませんが、そのとき家にいたのは彼と私の二人だけ。私は息をのみ、きびすを返して元来た階段を下りていきました。
彼は私の声が聞こえなくなったので、気に障ったようすで屋根裏部屋から降りてきました。そして、私が少し動揺しているのを見てとりました。私は自分が見たことを彼に伝えました。
「その女性の髪はショートで茶色、明色のスラックスをはき、紺のトップを着て、ベッドの上に座り、窓の外を見ていた。」
予想通り、彼は私をあざ笑いました。
翌日の午後、二人の間でまた口論が起こりました。その日の喧嘩は特にひどいものだったのですが、激しく言い合っている最中に嵐が起こりました。私は泣き崩れ、自分の部屋まで走っていって、ベッドの上に座り、窓の外を見つめました。そのとき外では稲妻が激しく光っていました。
彼が私のところまでやってきて、不気味なほど優しく話しかけてきました。私の肩に手をかけ、「僕が悪かった。頼むから下に来てくれ」と懇願。私は彼とともに一階まで下りていきました。ちょうど一階に降りたとき、雷の爆音が鳴り響きました。
彼の気分が急に変ったことに戸惑いつつ、「いったいどういうことなの?」と尋ねました。彼の答えもまた、普段の彼らしくないものでした。「昨日、何を見たの? 昨日、誰を見たの?」と聞かれたのです。一瞬戸惑ったあと、ハッと気づきました。私の髪はショートで茶色。その日の私の装いは、ベージュのチノパンツと紺のトップだったのです。昨日、私は自分自身を見たのです!
当時の私はこのできごとに震撼しましたが、今にしてみれば、とてもよい体験をしたと思っています。
メルモ
えんじ色のコート