『ドクター・フー』シーズン1最終話レビュー

製作国:イギリス
原題:The Legend Of Ruby Sunday / Empire Of Death(『ドクター・フー』シーズン1第7・8話)
監督: ジェイミー・ドノヒュー
脚本: ラッセル・T・デイヴィス
出演者:シュティ・ガトワ、ミリー・ギブソン、ボニー・ラングフォード、ジェマ・レッドグレイヴ、ほか
配信開始日:2024年6月15日、6月22日
時間:44分58秒、54分5秒

あらすじ

ドクター(シュティ・ガトワ)はルビー(ミリー・ギブソン)を UNIT (ユニット:エイリアンの脅威からイギリスを守るために設立された架空の政府機関)につれていく。UNIT が開発したタイム・ウィンドウ・テクノロジー(過去の状況をバーチャルリアリティー空間で再現する技術)によって、2004 年のクリスマスイブにルビーロードの教会で起こった事件の真相を究明し、ルビーの母親が誰であるかを探り出そうとしたのだ。

それと同時に、ドクターとルビーは、ある不可解な謎を解明しようとしていた。その謎とは、ドクターとルビーが行く先々で、同じ女性が様々な姿恰好で現れるというものだった。だが、この謎については、UNIT がその女性をすでに追跡していたので、簡単に解決した。謎の女性は起業家のスーザン・トライアド(スーザン・ツイスト)であった。彼女は長らく行方不明になっているドクターの孫娘、スーザンなのだろうか。あるいは、もっと恐ろしい何かの前兆なのだろうか。

レビュー

最終話前半(第7話)は大いに盛り上がったが、後半(第8話)では伏線の回収がイマイチで期待外れの結末に

ネタバレあり!

『ドクター・フー』のショーランナー(製作総指揮者)であるラッセル・T・デイヴィスは、同番組が約15年に渡るお休み期間を経た後、2005年に復活した際、製作総指揮を務め、『ドクター・フー』を大成功に導いた功績を持つ。デイヴィスはいったん2010年に引退したが、2023年の60周年記念特番から復帰した。

デイヴィスは脚本を執筆する際、伏線を張ることを好むようだ。特に、今季15代目ドクターのシリーズではそこかしこに数多くの伏線が張られた。謎めいたセリフがつぶやかれたり、裏のありそうなキャラクターが登場したりして、ファンに謎解きの楽しみを提供した。

とりわけ関心の的になったのは、同じ女性が毎回異なるキャラクターに扮して、ちょい役で出演したということだ。これらの役を演じたのはスーザン・ツイストという名のイギリスの俳優。彼女が演じたキャラクターの詳細は下記のとおり。

ワイルド・ブルー・ヨンダー(60周年記念特番の第2話):科学者アイザック・ニュートン家の家政婦
ルビー通りの教会(2023年クリスマス特番):ルビーがキーボードを演奏したパブで曲をリクエストした客
スペース・ベビー(シーズン1第1話):宇宙ステーションの乗組員
悪魔のコード(シーズン1第2話):EMIレコーディングスタジオ内にあるカフェのお茶くみ係の女性
ドカーン!(シーズン1第3話):戦場をパトロールしている救急車のAI
73ヤード(シーズン1第4話):ウェールズの海岸でハイキングをしている女性
ドットとバブル(シーズン1第5話):娘のリンディをファインタイムに送った資産家の母親
ローグ(シーズン1第6話):公爵の屋敷の壁にかけられた肖像画(公爵の母親)
ルビー・サンデーの伝説(シーズン1第7話):トライアド・テクノロジーの最高経営責任者スーザン・トライアド
死の帝国(シーズン1第8話):スーザン・トライアド

この謎については、シーズン1第7話と8話で解明された。スーザン・トライアドは、死をつかさどるエジプト神スーテクの召使として作られた「死の天使」であった。4代目ドクター(トム・ベイカー)の『火星のピラミッド』に初登場したスーテクは強大な力を持つエイリアンの種族の一人。古代エジプトでは神として崇められた。スーテクは4代目ドクターによって倒されたかに見えたのだが、実はターディスにとりつき、ドクターとともに時空間を旅しながら力を蓄えていった。そして、スーザンの複製を介して、ターディスが訪れたところすべてに死の砂をまき、宇宙に存在するすべての生命を滅ぼすための仕込みをしていたのだった。

スーザンが「死の天使」に変身する場面は非常に緊迫感があり、その特殊メイクはホラー映画に出してもおかしくないほど迫力があった。あまりにも恐ろしいので視聴中に中座した子供もいたようだ。確かに子供には刺激が強すぎるかも……。

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シーズン1に登場した謎の女性はスーザンだけではない。そのほかに正体不明の女性が2人も登場した。まず、生まれたばかりのルビーを教会に置き去りにした実の母親。そして、ルビーが住んでいる家の隣人、ミセス・フラッド(アニタ・ドブソン)。

ルビーの母親については、第8話でその正体が明らかになった。結局、ルビーも、ルビーの母親も、ごく普通の人だったという、拍子抜けするようなオチであった。スーテクは神に匹敵するほどの力の持ち主なのに、なぜかルビーの母親の正体だけは見抜くことができなかった。全人類を滅ぼしたスーテクがドクターとルビー、そしてメラニー(ボニー・ラングフォード)だけ生かしたのは、ひとえにルビーの母親の秘密を知りたかったからだ。それでは、ごく普通の女性に過ぎないルビーの母親が、なぜかくも特別な存在になったのだろう? ドクターの説明によると、人々が彼女を特別な存在だと信じたからこそ、特別な存在になったのだという。うーん、分かったような、分からないような……。

ルビーは普通の女子ということだが、シーズン1を通して、ルビーの感情が高まるたびに所かまわず雪が降ったのはなぜだろう? ひょっとして、この件はなあなあで済まされてしまうのだろうか? それとも次のシーズンで解明されるのか?

そして、3番目の謎の女性、ミセス・フラッド。彼女はターディスに関する知識を持っているので、只者ではなさそうだ。また、第7話の中で、ルビーの祖母に対して不吉な言葉をつぶやいている。さらに第8話の最後の場面で、ミセス・フラッドは「ドクターにはひどい運命が待ち構えています」と微笑みながら語っている。これらの点を考え合わせると、悪役である可能性が高そうだ。彼女の正体は次のシーズンで明らかにされるのかもしれない。

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