ドクター・フー『ロボット革命(シーズン2第1話)』レビュー

製作国:イギリス
原題:Robot Revolution(『ドクター・フー』シーズン2第1話)
監督: ピーター・ホア
脚本: ラッセル・T・デイヴィス
出演者:シュティ・ガトワ、ヴァラダ・セトゥ、ジョニー・グリーン、ほか
配信開始日:2025年4月12日
時間:46分2秒

あらすじ

17年前、イギリスの青年アラン・バッド(ジョニー・グリーン)は、恋人ベリンダ・チャンドラ(ヴァラダ・セトゥ)の誕生日プレゼントとして、遥か彼方の恒星に彼女の名前を冠し、その証明書を彼女に贈った。しかし、その恒星を周回する有人惑星が存在することは知る由もなかった。

その後、成長したベリンダは看護師として多忙な毎日を送っていた。そんな中、惑星ベリンダチャンドラ・ワンを支配するロボットたちが、彼女を拉致するために地球にやってきた。ベリンダを女王と崇めるロボットたちは、自分たちを支配するAIジェネレーターとベリンダを融合し、10年にわたる人類の反乱に終止符を打とうとしていたのだ。

しかし、ドクター(シュティ・ガトワ)もまた惑星ベリンダ・チャンドラ・ワンにやって来ていた。ベリンダを救出し、地球に連れ戻すのがドクターの目的。だが目的はほかにもあった。ドクターは、人間とロボット間の争いの火種となった謎の事件を解明しようとしていたのだ。

レビュー

『ドクター・フー』の面目躍如たるシーズン・オープナー(第1話)。前年のシーズン1第1話よりも顕著な改善が見られる。

2024年に放送・配信されたシーズン1(シリーズ14)は、玉石混交のシーズンだったと個人的に思っている。シーズン1は『Boom (第3話)』や『73ヤード(第4話)』といった傑作を生みだした一方で、最初と最後のエピソード『スペース・ベビー(第1話)』と『死の帝国(最終話)』は期待外れだった。また、シーズン1全体を貫くストーリー展開や伏線の回収もイマイチで、拍子抜けさせられた。

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シーズン2第1話『ロボット革命』は、『スペース・ベビー』に比べると顕著な改善が見られ、大いに堪能した。ユーモアと機知に富んだセリフが次から次へとやりとりされる脚本は製作総指揮者ラッセル・T・デイヴィスの得意芸で、このエピソードでもその才能が遺憾なく発揮されていた。

特殊効果も見どころいっぱい。大型ロボットやロケットのデザインは50年代のレトロSF風。「ポリッシュ!ポリッシュ!(磨け!磨け!)」が口癖のお掃除ロボットは思わず顔がほころんでしまうかわいらしさだ。ちなみに大型ロボットはCGではなく、ロボットのスーツを制作、中に俳優が入って動かしているのだそう。スーツが完成するまでに8カ月を要したということなので、ロボット1つとっても、陰で大変な努力がつぎ込まれたことが分かる。

このエピソードに登場する悪役は『ドクター・フー』のサイバーマンや、『スター・トレック』のボーグを連想させた。その造形は精巧に作りこまれており、レトロSFの域をはるかに超えている。ほとんどSFホラーの領域に達しているのではないか。悪役を演じた俳優によると、特殊メイクに2時間を要したそうだ。だが、この番組は子供も視聴するので、あまりグロテスクな表現にならないよう気をつかっているのが見て取れる。

マイナス点もいくつかある。15代目ドクターは「泣くドクター」であり、毎回といっていいほど涙を流している。今回もその例外ではない。多くのファンがこれについて不満を表明しているのだが、ラッセル・T・デイヴィスは変える気が毛頭ないようなので、受け入れるしかない。毎回泣いていたら、真に衝撃的なできごとがあった時、そのインパクトが薄れてしまうと思うのだが……。

ヴァラダ・セトゥ演じる新コンパニオンのベリンダは知的で精神的に独立した女性。ドクターに対しても物おじせず、率直に意見を述べるので、好感度が高い。「あなたの冒険にかかわるつもりはないわ」と断言されたドクターは、ベリンダを地球に送り届けようとするのだが、何かに妨害され、戻ることができない。彼女を地球に送り届けるのが今シーズンのテーマになるようだ。

セトゥはシーズン1第3話『Boom』で未来の兵士マンディを演じたのだが、ベリンダはこのマンディと何らかの関係があるようだ。その辺の謎も追々解き明かされることになるようなので、興味をそそられる。