『ドクター・フー』シーズン2最終話レビュー

製作国:イギリス
原題:Wish World / The Reality War(『ドクター・フー』シーズン2第7・8話)
監督: アレックス・サンジヴ・ピライ
脚本: ラッセル・T・デイヴィス
出演者:シュティ・ガトワ、ヴァラダ・セトゥ、ミリー・ギブソン、ほか
配信開始日:2025年5月24・31日
時間:44分09秒・66分40秒

あらすじ

ドクターと同じく惑星ガリフレイの出身で、冷酷非情な科学者であるラニ(アーチー・パンジャビ)は世界を造り変えた。生まれたばかりの「願いをかなえる神」を誘拐し、フラッド夫人(ラニの分身)がドクターから奪った装置・ヴィンディケーターのエネルギーで、願いをかなえる力を強化して、全く異なる地球を創造したのだ。

ドクター(シュティ・ガトワ)は今や自分がジョン・スミスという名のサラリーマンだと信じ込んでいた。ベリンダ(ヴァラダ・セトゥ)は彼の妻で、幼女・ポピーは彼の娘となっていた。何かがおかしいことを悟ったルビー(ミリー・ギブソン)は、訳も分からぬままジョン・スミス家を訪れる。それによってドクターが失われた記憶を取り戻すことはなかったが、新たな現実への疑念を植え付けるという効果はあった。

だが、これはすべてラニの計画の一部だった。彼女は、初代・2代目・3代目ドクターによって反物質宇宙に送られた悪のタイムロード・オメガを復活させることをもくろんでいたのだ。

レビュー

さようなら、15代目ドクター!

昨年、華々しくデビューした15代目ドクターだったが、なんと、たった2シーズンで降板する運びとなった。これだけ任期が短かったドクター役の俳優は、1シーズンで降板した9代目役・クリストファー・エクルストンに次いでシュティ・ガトワが2番目ではないだろうか。また、ガトワは、ダーレク(ドクターの天敵)と戦うことのなかった唯一のドクターでもある。

ガトワは少なくとも第3シーズンまでドクター役を演じる予定だった。ところが、共同出資していたディズニーが、シーズン3の契約更新に難色を示すようになった。シーズン2の視聴率を見てから更新を検討すると言い出したのだ。その結果、BBCはシーズン3の制作に手をつけられない、宙ぶらりんの状態になってしまった。ディズニーが最終結論を出すまで、ガトワは俳優として自由に活動できないため、降板を決意したようだ。

シーズン2の撮影は2023年に終了していたのだが、ガトワの辞任を受けて、ストーリーを改変せざるを得なくなった。かくして2025年の2月、15代目の生まれ変わりに至る場面が急いで撮り直された。この場面は、付け焼刃にしてはよくできており、感動した。

とはいえ、多くの伏線が回収されないまま、15代目の物語は終わりを迎えることとなった。スーザン(初代ドクターの孫娘)はなぜ15代目にコンタクトしてきたのか?、自ら犠牲を払って地獄のような異世界に落ちたローグ(ジョナサン・グロフ)はどうなった?、トイメイカー(宇宙のおもちゃ職人)の金歯を拾った謎の女性は何者?、ミープやローグ等が言及していたボス(上司)とは何者?、等々、すべてが尻切れトンボで終わってしまった。

最終話のラストシーンで、15代目はローズ(9代目・10代目のコンパニオン)に生まれ変わった。これは、16代目を演じる俳優がまだ決まっていないので、とりあえずウケを狙ってローズに生まれ変わらせたという苦肉の策のようだ。大方のファンは、ローズが16代目ドクターではないと推測している。

この後、『陸と海の間の戦い(仮題)』という特別ドラマが放送されることになっている。これは、人類と、古代種族・シーデビル(海洋生物)との闘いを描く、ラッセル・T・デイヴィス創案のドラマ。『ドクター・フー』系列の作品だが、ユニット(悪意のあるエイリアンに対処する目的で設立された架空の英政府機関)のメンバーが主人公で、ドクターは登場しない。

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