双子パラドックス

このページでは有名な「双子のパラドックス」について解説します。双子の兄弟がいて、一人が宇宙旅行に出かけ、一人が地上に残った場合、二人の年齢に差が生じます。なぜこんなことになるのでしょう?

双子の兄弟

太郎さんと次郎さんという双子の兄弟がいると仮定しましょう。太郎さんは宇宙船に乗って宇宙旅行に出かけます。次郎さんは地上にとどまっています。その後、太郎さんが地球に帰ってきて次郎さんと時計を比べたら、次郎さんの時計のほうが進んでいるはずです。なぜこのようなことが起こるのでしょう? この現象を理解するためには、ドップラー効果について知る必要があります。



ドップラー効果

ドップラー効果とは物体の動きに応じて電磁波の周波数が変わることです。ドップラー効果を理解するのに手っ取り早い方法は音波について考えることです。音を発している物体があなたに向かって近づいてくると、音の周波数は増加します。それに対して音を出している物体があなたから遠ざかっていくと、周波数は減少します。

そのよい例は救急車のサイレンです。救急車は走りながらピーポーピーポーという音を発しています。救急車があなたの家の前を通り過ぎた瞬間、音の調子が際立って変わりますよね。

もうひとつの例はレーシングカーです。レーシング会場で車があなたの前を通り過ぎた瞬間、走行音の調子がハッキリと変わりますよね。光でも同じ原理が通用します。光を発している物体があなたに向かって近づいてきたら、光の周波数は高くなり、振動時間が短くなります。その物体があなたから遠ざかっていったら、周波数は低くなり、振動時間が長くなります。

双子パラドックス

以上の情報を元にして双子パラドックスについて検証してみましょう。太郎さんは光速の60%の速度で宇宙に飛び立ちました。なぜ60%なのかというと、これに相当するドップラー偏移の率が、近づいてくる物体だと「二倍」になり、遠ざかる物体だと「半分」になるからです。ですから光速の60%の速度の物体があなたに向かって近づいてくると時間が半分に縮まり、あなたから遠ざかっていくと時間が二倍に延びるわけです。

というわけで、太郎さんが宇宙に向けて飛び立ちました。彼は宇宙船の中で24時間を過ごします。行きが12時間、帰りが12時間です。太郎さんは地球を出発後、一時間ごとに次郎さんに無線信号を送る手はずになっています。宇宙船が地球から遠ざかっているとき、信号が地球に到達する時間は二倍になります。したがって太郎さんが出発してから一時間後に最初の信号を送ったら、次郎さんは二時間後にその信号を受け取ることになります。太郎さんが二時間後に信号を送ったら、次郎さんは4時間後に信号を受け取るわけです。したがって、宇宙船が地球から遠ざかっていく間に太郎さんが12回信号を送ったら、次郎さんが最後の信号を受け取るのは24時間後になります。

さて、12時間後、太郎さんが宇宙船の向きを変えて地球に戻ってきました。今度は信号が地球に到達する時間は半分になります。ですから、宇宙船が地球に向かって旅を始めてから一時間後に太郎さんが信号を送ったら、次郎さんは30分後にその信号を受け取ります。こうして太郎さんが一時間ごとに12回の信号を送ったら、次郎さんは6時間後にそれらの信号をすべて受け取ることになります。

ですから、太郎さんが宇宙船内で24時間を過ごしている間に、次郎さんは24時間足す6時間で、計30時間を地上で過ごしたことになります。かくして次郎さんは太郎さんよりも6時間年上になったわけです。

宇宙船の速度が速まり、飛行時間も延びたら、時間的な差はさらに広がります。例えば、光速の80%の速度で一週間の宇宙旅行に出かけたら(行きが84時間で帰りが84時間)、太郎さんが宇宙船内で過ごす時間は168時間。一方、次郎さんが地上で過ごす時間は280時間になります。したがって太郎さんが一週間後に地球に戻ってきたとき、次郎さんは4日と16時間、太郎さんよりも年をとっているのです。つまり、地球に帰還した太郎さんは未来にタイムトラベルしたことになります!


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