熊手を持った男

深夜に山道を車で走っていた3人の男女が目にした恐怖の光景とは……?

これはアメリカの女性・Hさんの体験談です。

これは20年ほど前に体験したできごと。当時、私は彼氏と付き合い始めていた。彼の名前はマイケルということにしておきましょう。

ある夜、マイケルと、彼のルームメイト・ポール(仮名)と連れ立って、友達の家で開かれたパーティーに出席。その家は人里離れた山の中にあった。私はジャンケンに負けて運転係に。一晩中、清涼飲料ばかり飲んでいた。

パーティーも終わり、午前3時頃、自宅に向かって、暗い山道を車で走っていた。運転をしたのは、もちろんお酒を飲まなかった私。そんな中、男性2人がトイレに行きたいと言い出した。

車を停めるのにちょうどいい砂利道があったので、そこに停車。目の前には木々が生い茂っていた。男たちは車から降りて、用を足すために車の側面に。ポールは私に「ライトを消して」と頼んできた。きっと恥ずかしがり屋なのね。私は彼の頼みに応じて、ライトを消してあげた。

そのとたん、木々が消え、その代わりに満月に照らされた古い納屋が出現!

私は理性で判断し、「なんて面白い錯覚!」と思った。ライトを再び点けると木々が見えた。消したら納屋。何度か点滅させてみた。

木々、納屋、木々、納屋……。

これはきっと月光の不思議な錯覚に違いない、と自分に言い聞かせ、「ねえ、見て、これ、すごいでしょ?」と2人に声をかけた。男たちは用を足しながら、私がライトを点滅させるのを呆然と見つめていた。

やがて、ギーという音が聞こえた。納屋の扉がゆっくりと開く。その隙間から、揺らめく炎か古いランタンのような光が見えた。そして、納屋から男が出てきた。背が高く、オーバーオール(野良着)を着て、大きなつばの垂れ下がった帽子をかぶり、左手には大きな熊手。帽子のせいで顔はほとんど影になっていたが、月明かりのおかげで、彼が微笑んでいるのがはっきりとわかった。

マイケルとポールは慌ててジッパーを上げ、車に飛び乗った。男はゆっくりと、しかし着実に、こちらに向かって歩いてきた。ライトをつけると、納屋は再び木々に変わったが、見えないからといって男が消えたという保証はない。

私は猛スピードでそこから飛び出した。3人とも、この異常事態にすっかり動揺し、恐怖に震えていた。山道を猛スピードで下っていた時、事故を起こさなかったのは本当に幸いだった。

その後、私たちはこのできごとについて話し合い、理屈をつけようとしたが、できなかった。好奇心を抑えきれず、昼間にそこに戻ってみた。しかし、何度その道を行き来しても、あの砂利道を再び見つけることはできなかった……。

その後、私はマイケルと結婚した。20年が経過した今でも、あのできごとを説明できない私たちがいる。