オーストラリア・ビクトリア州中部に実在する岩山ハンギング・ロックで、人が忽然と姿を消し行方不明になった……そんな不可解な事件を幻想的な映像で描いたこの作品、当初は実話という触れ込みだったが、最近では事実無根のフィクションとして認識されているようです。しかし、一般の論調は、この種の超常現象を端(はな)から否定する方向に傾いているように思われます。この作品の場合はどうなのでしょう?
『オーストラリア版 Elle 』が偏見のない公平な視点からこの問題を論じているので、以下に引用させていただきます。
まずは間違いから。小説や映画の中では「1900年2月14日土曜日のバレンタインデー」にこの事件が起きたとされていますが、これは間違いで、1900年のバレンタインデーは水曜日だったそうです。
この作品に登場する寄宿制女子学校アップルヤード・カレッジは、原作者のジョーン・リンジーが通った「クライド・ガールズ・グラマー・スクール」が元になっています。ジョーン・リンジーの伝記本を執筆したジャネル・マクロックによると、似たような事件が実際に起きたと同校の卒業生が主張しているそうです。1800年代に2人の女子学生が行方不明になったとのこと。
いくつかの超常現象も報告されています。1975年にオーストラリアで本作が封切られた際、劇場の時計が12時きっかりに止まりました。また、本作のプロデューサーによると、撮影中にも似たような現象が起きたそう。下記は同氏の発言です。
スタッフ全員の時計が誤作動しました。私の時計は、ハンギング・ロックにいたとき、午後6時きっかりに止まりました。時間を尋ねることがスタッフの間でジョークになったほどです。
ジョーン・リンジーは、彼女の見た夢がこの話の元ネタになっていると出版社に語っています。しかし、それは普通の夢ではなかったようです。子供のころハンギング・ロックを訪れた彼女は、睡眠中に夢の中でこのできごとを目撃しました。その夢があまりにも現実味を帯びていたので、思わず目を覚ましたといいます。
ジョーンさんの親友であるコリン・コールドウェルは「彼女は人が見えないものを見る能力を持っていた」と語っています。オーストラリアの原住民のように土地を読むことができたというのです。『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙のインタビューに応え、コリンさんは次のように語っています。
はい、確かに彼女はミスティック(不思議な力を持つ人)でした。風景から物事を察知するという、一般人にはない能力を持っていたんです。
ちなみに、この作品はBBC(英国放送協会)によって2018年にリメイクされました。下の動画はその予告編です。
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