光瀬龍の時間SF作品

光瀬 龍(みつせ りゅう)

光瀬龍(1928年 – 1999年)は、日本の著名なSF作家。彼の作品は未来世界や宇宙、時間旅行をテーマにしたものが多く、特に哲学的な視点からの描写が特徴的。代表作として『百億の昼と千億の夜』が挙げられる。この作品は、古代から未来にかけての壮大なスケールの物語で、読者に強い印象を与えた。

また、彼は自らの作品で深い人間性や社会批判を盛り込み、単なるエンターテインメントに留まらず、文学的な深みを持たせた。光瀬龍は、SFの枠を超えた哲学的探求を行い、現代日本のSF文学に大きな影響を与えた作家の一人である。

光瀬龍の時間SF作品

1967年

夕ばえ作戦

木かげから飛び出した茂は、声のした方に向けて懐中電灯をすばやく点滅させる。その瞬間、闇にひそんでいた風魔忍者は目がくらみ、屋根からころがり落ちた。だが、そこには茂がばらまいておいたカンシャク玉が……。

茂は古道具屋で買った奇妙な機械(タイム・マシン)をいじっているうちに突然、江戸時代の寒村へ来ていた。そこで、人々を苦しめる風魔忍者団を目撃した彼は正義感に燃えて彼等と対決! 現代と過去の対比をたくみにとり入れた光瀬龍の傑作ジュニアSF。

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文庫: 夕ばえ作戦


1969年

寛永無明剣

時は寛永年間――“大坂夏の陣”の戦が終って19年、いまだ世情は定まらず、各地には機会があれば倒幕を企てる勢力が蟠踞していた。六波羅蜜たすくは、反幕陰謀事件を追っているさなか、柳生のさしむけた刺客に襲撃される。将軍家指南役である柳生がなぜ……。その後、町奉行などを狙う暗殺事件が相ついで起こった。たすくは、これら事件の背景に、人類終焉のはるかな未来から迫りくる恐るべき企みを知ったのだ……。史実にのっとり雄大なスケールで描く時代SFの傑作長編。

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文庫:寛永無明剣


1972年

SOSタイムパトロール

突然、仁の耳に戦いの雄叫びが聞こえ、硝煙の匂いが鼻をついた。傍らを刀をふりかざした武者が走り抜け、矢が飛びかった。傷ついた腕をおさえて、仁は途方にくれてしまった。<俺はいったい、どうしてしまったのだろう>

通信販売の電子工作キットを組み立てていたはずの中学3年生の仁は、どうやら元和元年、大阪夏の陣の真っ只中に飛び込んでしまったらしかった。

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1974年

多聞寺討伐

黒羽郷の多聞寺周辺では、怪事件が続発していた。その日は、賭場で揉め事を起こした男の首が突然落ちるという異常事態が起こった。それだけではない。なんと、男の胴体は自分の首を拾い、血の海の掃除をはじめた!奇怪な寺へ向かった武士団が見た地獄とは……

山寺に巻き起こる、想像を絶する凄絶な戦いを描いた表題作他、単行本未収録「大江戸打首異聞」をふくめ、未来人の視点から歴史の狭間を照射する、光瀬龍の時代SFの傑作を網羅。

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1975年

征東都督府

「日本人禁止進去、大清国征東都督府」日比谷公園に突如、出現した長大な鉄条網と、墨書きされた木札を見た勤め帰りのサラリーマンたちは驚いた。数日後、古物商を営む男は買物の最中に、財布の中身が、清国の歴史に実在しなかった見知らぬ紙幣にすりかえられていたのに気づいた! ――歪んだ歴史の謎を追ってタイム・パトロールは慶応31年に飛んだ。さまざまな異変を引き起こした理由は何か……。近藤勇、土方歳三、勝海舟、樋口一葉などを登場させて描く奇想天外な長編歴史SF。

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文庫:征東都督府


1976年

明日への追跡

あいつが転校してきてから、妙なことが起こりすぎる……。陽気な五郎がトラックにぶつかって死んだ。秀才肌の北島が川に飛びこんで自殺した。二人とも〈あいつの秘密をバラしたから殺される!〉と、死ぬ前に奇妙なことをもらしていた。さらに、二人の葬儀が終わってしばらくして、差出し人不明の手紙が届いた。《二人の死の原因について話したい》というのだ。大変だ、こんどは手紙を受け取った田島が危ない! 学園を恐怖のドン底に陥れた怪事件を描くSFミステリーの傑作長編!

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1976年

歌麿さま参る

風呂敷をかかえた男が、古道具屋に持ちこんだ刀は、まぎれもない名刀だった。それも、何十年、何百年に一刀という、見る者の魂を吸いとるようなものだ。だが、不思議なことに、柄には、あきらかに最近つけられた血のしみが残されていた。――その後、あちこちで、いままで知られなかった名刀が売りに出された。刀だけでなく、謎の絵師として知られる写楽の新しい絵までもが売りに出されたのだ……。笙子、元、かもめ、3人の時間局員が活躍する代表作ほか、著者会心の時代SF集。

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1981年

復讐の道標

大学受験に失敗し、沈んだ気持で入ったスナックで、良介は“女”のかすかな悲鳴を聞いた。このことが、不思議な世界に迷いこむきっかけだった。数日後、直径5cmほどの金属の円筒が突然、彼に送られてきた。これが、なんとタイム・マシンだったのだ。――マシンによって救い出した“女”は、未来からやって来た時間監視局員だった。そして、次に二人がテレポートしたのは幕末の京都。坂本竜馬暗殺の夜だった……。奇妙な世界に巻き込まれた良介が活躍する長編青春SF。

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文庫:復讐の道標