これは日本の男性・Sさんの体験談です。ご投稿ありがとうございました!
この前の記録的な大雪でふと思い出したので書こうと思います。今から20云年前、中部地方の実家での話です。その日、5月であるにも関わらず本格的な雪が降りました。
小学校高学年(確か小5だったかと思います)だった私は居間でレースのカーテンをめくり、母が家の周りの雪をかく音を遠くに聞きながら雪降る外の景色をぼんやりと眺めていました。
と、突然なんの前触れもなく、周りが静かになりました。音が全くしないのです。雪かきの音もしていません。自分の心臓などの音も全く聞こえません。しかし、自分は動けました。ですが、足音も服の擦れる音も全くしませんでした。
部屋はヒーターをがんがんに焚いてかなり暑いはずなのに、暑くもなく、寒くもありませんでした。温度が全く感じられませんでした。何より、雰囲気が普段と違い、周りから急に色がなくなったかのようでした。
私は昔から何かハプニングが起こると頭が急に冴える方なので、とりあえず現状を把握しようと動きだしました。まず、壁にかかる時計に目をやると、午前11時36分で全ての針が止まっていました。日にちの記憶は薄れても、私は時間狂なので時間だけは特によく覚えています(笑)
雪の影響で電気やらがストップしたのかも、と大変だと思いました。しかし、居間の電気はいつもと同じで全て点いたまま、ヒーターもちゃんと電源が入っていました。
カーテンを見ると、私がめくった状態のままで止まっていました。触ってみるとなんとも奇妙なことに感触はそのままにどんなに力を入れて動かそうとしても鉄のように固く全く動きませんでした。
そして、外を見ると、降っている雪がそのまま空中で静止していました。子供心にただ漠然と現状をとらえるしか出来ませんでした。
絨毯に座り、これからどうしたものかと考えはじめ、どれくらい経ったのか分かりませんでしたが、また突然、何か周りの雰囲気というか空気というか、とにかく様子が変わった気がしたので顔をあげると、時計の音が聞こえ、温度が感じられました。
全てが一瞬にしてもとに戻っていました。色が元通りに鮮やかになった気がして、頭の奥、本能の部分で自分の世界に帰ってきたと感じ、同時に安堵感が身体中を満たしました。
時刻は午前11時36分でした。とりあえず、お菓子でも食べようと冷蔵庫を開けました。
それから何分かして雪かきをしていた母が「あ~冷た~」と言いながら玄関先でブーツの雪を落とす音が聞こえました。