

近所の子二人と毎日のように仲よく遊んでいた少女。ところが、ある日二人が悲しそうな顔つきを見せていて……
私が6歳か7歳のころ、近所の子供たちと遊んだことをハッキリ覚えています。袋小路で鬼ごっこをしたり、チョークで道にお絵かきなどをしたものです。
私は二人の子と仲良しでした。一人は男の子で、名前はランディ。もう一人は女の子で、名前はリリーでした。ランディは色が白くて髪はこげ茶色でした。リリーは赤毛で肌の色は浅黒かったです。私の肌は浅黒く、黒髪でした。
二人とも元気いっぱいで、日が沈むころまで外で遊びまくったものです。お母さんから呼ばれたら、二人は駆け足で各々の家に戻っていきました。そして翌日になったら、また一緒に遊びました。
二人はごく普通の子供でしたが、二、三、変わったところがありました。たとえば、チョークでお絵かきをした時、ランディもリリーも奇妙な記号を書き、その横にでたらめの言葉を書くのがお気に入りでした。どこかでその記号を見たことがあるような気がしたのですが、どうしても思い出せませんでした。いくつかの言葉は、今日もなお、その意味が分かりません。
時々、私の母がジュースを持ってきてくれたのですが、その際、母は二人がでっち上げたかわいい文字を見て、笑ったものです。
ある日、いつものように一緒に遊ぼうとして外に出たら、二人は曲がり角のところに腰をおろして、むっつりしていました。「なぜ悲しそうにしているの?」と尋ねたら、二人はこう答えました。
「2137に帰らなくちゃいけないの。」
「それはどこにあるの?」と聞いたら、二人は「もっとあと」と答えました。次に二人は「ちょっとここにいて。私たちのことを忘れないように、プレゼントを持ってくるから」と言って、それぞれの家に走っていきました。
言われたとおり道に座って待っていたら、二人はいくつかの品を携えて戻ってきました。あれほど奇妙な贈り物をもらったのは、後にも先にもその時だけでした。私がもらったのは、七色にキラキラ光る櫛(くし)、何も記されていない小さなチューブに入ったローション、宝石を刻んで作ったと思われる箱でした。私は感謝の意を表すために、櫛で髪の毛をとかし、ローションを手に塗りました。
二人は私を抱きしめたあと、各々の家に駆け戻っていきました。
私の記憶はそこで途切れています。次に私が覚えているのは、朝が来て、自分の部屋で目覚めたことです。私は白い肌の手で眠い目をこすり、赤毛の髪をとかしました。
「ランディとリリーはもう引っ越してしまったの?」と母に尋ねたのですが、母は私が誰の話をしているのかさっぱり分かりませんでした。近所に私と同じ年ごろの子供は一人もいなかったのです。
その日、ランディとリリーは地上から姿を消しました。そして、その日を限りに、私の容姿が変わりました。
二人からもらった小さな櫛、チューブ入りのハンドローション、そしてキラキラ光る小さな箱は、いまだに暖炉の上に飾ってあります。今日に至るまで、私はその箱を開ける術(すべ)を知りません。
・未来からのタイムトラベラーでしょう、ロマンチックないいお話です。科学技術が発達すればありえない事があり得る。私たちが縄文時代にタイムトラベルすれば、もはや同じ人間と思われないんじゃないかな?
syunさん(2017年3月25日)
・ランディとリリーに貰った櫛とローションで
アナタの髪が黒毛から赤毛になり
アナタの肌が浅黒から白色になったんですね
不思議なはなしですねえ
暖炉の上にある箱をぜひ開けましょう
ハンニバル・レクターさん(2016年11月7日)