

なくした携帯を探していた二人の男が体験した世にも不思議なできごととは……?
ある日、僕は友達とタコベルに行った。屋外のテラスに席をとり、食事をとった。
タコベル:アメリカの大手ファーストフードチェーン。タコス、ブリートなど、メキシコ料理風の食品を提供する。日本では東京と大阪に出店している。
食事が終わったので席を立ち、バス停に行って、そこのベンチに腰を下ろした。そして友達と二、三分の間だべった。タコベルとバス停の間の距離は約3メートルだ。
そんな中、自分の iPhone が見当たらないことに気づき、友達に「お前がとったのか?」と尋ねた。友達が否定したので、食事をとったテーブルまで走っていったのだが、スマホはテーブルの上に置いてなかった。
「ひょっとしたらリュックに入れたのかもしれない」という考えが浮かんだので、二人でリュックの中や、リュックのポケットの中を徹底的に調べたが、それでも電話は見つからない。
「友達がいたずらで盗んだのかもしれない」と思った僕は、衣服のポケットの内袋を外に引っ張り出させ、靴下の中まで調べたが、電話は出てこなかった。
友達への疑いが晴れたので、誰かに盗まれたのだろうと思い、友達のスマホのアプリで自分の iPhone の居場所を突き止めることにした。
その結果、僕のスマホは現在位置から二つ目の通りにあることが分かった。犯人はタコベルで僕の携帯を盗み、その通りに向かったに違いない。
僕たちはアプリが指し示す場所に向かって走っていった。そこは裏通りで、5人の人が腰を下ろしていた。友達が「お前の携帯にテストメッセージを送って通知音を鳴らし、犯人に問い詰めようぜ」と提案したので、同意した。
友達がその操作を行おうとした時、裏通りの一番奥に奇妙な風体の老人が座っていることに気づいた。その老人は脅迫するような表情で僕たちをにらみつけていた。
友達がテストメッセージを送るために自分の携帯を取り出した時、老人は立ち上がり、速い足取りで歩み去っていった。友達がテストメッセージを送ったら、僕のリュックについている小さなポケットの中から通知音が鳴った。
ポケットの中を見たら、果たしてそこに僕の携帯が入っていた! 僕たちは愕然とした。そのポケットは少し前に友達と何度も調べ、何も入っていないことを確認したのだ。
次に僕たちは息つく暇もなく老人を追いかけた。老人は裏通りの角を右に曲がり、別の裏通りに入っていったのだ。ところが、老人はどこにも見当たらなかった。跡形もなく消え失せてしまったのだ。
老人が立ち上がってから、この時点までに経過した時間は精々10秒。老人が消えた裏通りには、扉もなければ、隠れるような場所もなかった。老人がそんなに早く裏通りの端まで歩いていくことは実質的に不可能だった。
僕の携帯は、文字通り、瞬間移動したのだ!