

世界中のマスコミからインタビューの申し込みが殺到! イギリスの作家であるピーター・メイが新型コロナウイルスの流行を予見するような小説を2005年に執筆していた!
イギリスの作家が新型コロナウイルスの流行を予言するような小説『ロックダウン』を2005年に執筆していた!
ピーター・メイさんは1950年にイギリス・スコットランドで生を受けました。同氏は子供のころから作家になることを志望していたのですが、生計を立てるためにとりあえずジャーナリストとして仕事をスタートしました。
26歳の時に書いた小説『ザ・リポーター(記者)』がBBC(英国放送協会)の目に留まり、テレビシリーズ化されることになったので、これを機に脚本家に転向し、ソープオペラ(特定の街における一般市民の日常生活を描く連続ドラマ)を創案、視聴率がトップ10に入るほどの大成功を収めました。
同氏は1996年にテレビ界から離れ、犯罪小説家に転向しました。彼の小説はこれまでにイギリス国内で200万部以上の売り上げを記録、世界中で数百万部を売り上げています。

小説『ロックダウン』は2005年の作品です。インフルエンザ・ウイルスが世界中に蔓延、その発生地であるロンドンが舞台になっています。この小説の中で、殺害された子供の骨が入った袋が仮設病院の建設現場で発見されます。24時間後に引退を控えたロンドン警視庁の刑事、ジャック・マクニールが捜査に当たることになります。ところが、子供の身元が割り出されることを何としてでも防ごうとする殺し屋が捜査の邪魔をするようになり、手に汗握る展開となります。
この小説には、世界の現状を彷彿(ほうふつ)とさせるような描写が随所に見られます。例えば、市民に外出禁止令が出される中、警察官や軍人が道で市民の行動に目を光らせる、増え続ける患者を収容するための仮設病院が建設される、普段は人があふれる繁華街がひっそりと静まり返る、といった描写です。
現実の世界でイギリスの首相、ボリス・ジョンソンは新型コロナウイルスに感染し入院しましたが、小説の中でも首相が同じ目に遭います。しかも入院した病院(聖トマス病院)まで同じなのです! ただ違っていることが一つあります。小説の中で首相は死去するのですが、幸いなことにボリス・ジョンソン氏はウイルスとの闘いに勝ち、回復しました。
もう一つ感心するのは小説の題名です。この小説が書かれた2005年には、英語を話す人々の間でさえロックダウン(封鎖)という言葉はなじみのないものでした。今や日本でもこの言葉が使われるほど一般的になっています。
2005年にピーターさんが本作の原稿を出版社に提出したところ、出版を拒否されたそうです。「あまりにも非現実的であり得ない設定なので、犯罪小説というよりはSFに近い」との理由で陽の目を見なかったのだそう! ところが、今年コロナが世界中に広まったので、出版社は手の平を返したように二つ返事で出版に同意しました! しかし、ピーターさんは「人の不幸によって私腹を肥やしたくない」との理由で、本作の売り上げを全額、コロナと闘う医療機関に寄付することを明言しています。
Lockdown: the crime thriller that predicted a world in quarantine (English Edition)
ちなみに、ピーターさんが未来を予言するような小説を書いたのはこれが最初ではありません。例えば、彼が連続テレビドラマの脚本家を務めていたころ、ドラマの中で男性の登場人物が梯子から落ちて腕を折る場面があったのですが、それから3か月後に、この役を演じた俳優がまったく同じ事故に遭ったそうです。また、ドラマの中で若い女性が妊娠する場面があるのですが、この役を演じた女優もそれからすぐに妊娠したそうです。やがてこの不思議な偶然は俳優の間に知れ渡るようになり、「私が演じているキャラクターを殺さないでね」とか「私が演じているキャラクターが宝くじに当たるという展開はどうでしょう?」などと冗談を言われるようになったそうです。
もう一つ、不思議なできごとがあります。小説の中で医学的に正確な描写を心がけるピーターさんは病理学者に専門的なアドバイスを求めているのですが、ある時、病理学者の助言に従って、小説の中でこんな場面を執筆しました。女性が事故に遭い、大腿動脈(だいたいどうみゃく)が切れてしまいます。この動脈は腿(もも)の奥深くに埋もれているので、止血帯を巻いただけで出血を止めることはできません。したがって、強い圧力を与えて出血を抑えるために、人が脚の上に立たなければならないというのです。
ピーターさんはこの病理学者と友達になり、ある日、二人でフランスの街に出かけました。すると、そこで地面に倒れている女性がいました。彼女は歩いている最中につまづいて転び、パラソルを固定するための台が腿に突き刺さって大腿動脈が切れ、出血が止まらなくなったのです。そこで病理学者は応急処置を施しました。さすがに彼女の脚の上に立つことはなかったのですが、その代わりに傷口の中に手を突っ込み、大腿動脈を見つけてそれを指でつまむことによって出血を食い止め、女性は命を取り留めました。もしピーターさんがこの病理学者をアドバイザーとして雇わなかったら、二人でフランスの街に出かけることはなかったでしょう。女性は過剰出血によって命を落としていたはずです。
「心配」「怒り」「悲しみ」「孤独」を手放し本来の自分を取り戻す新方式
『ロックダウン』は出版後に大きな注目を集め、CNN(アメリカのニュース専門チャンネル)からナイジェリアの放送局に至るまで、インタビューの申し込みが殺到するようになりました。ピーターさんは一日あたり4件ほどのインタビューをこなしているそうです。