

これはあるアメリカ人男性の体験談です。
アフリカ・サバンナの道なき道をドライブしていた男性が体験した奇妙なできごととは……?
私の父は詩人 兼 芸人で、バーでよくしゃべり芸を演じています。父の出し物の中に「奇妙な書」と名付けられたものがあります。これは観客の中から何人かを選び、その人が体験した不思議なできごとを聞き出すというもの。
「あなたが体験したできごとの中で最も奇妙なものは何ですか?」
気まずい雰囲気になるのではないかと思うかもしれませんが、父は人をリラックスさせ、奇妙キテレツな話を引き出すのが本当に得意なのです。99%の人はそんな体験をしているのですね。この話は、父が地元のバーでごく普通のお役人から聞き出したものです。
その人は数か月に渡り中央アフリカの田舎に駐在していました。ある日、彼は人里離れた村で一日を過ごした後、サバンナのほとんど道とは呼べないような砂利道をドライブして、帰宅の途についていました。夜もとっぷりと暮れ、空には月や星が明るく輝いていました。
そんな中、彼は道の真ん中に何かがいるのを認めました。近づくにつれ、それがロバであることが判明しました。大型でホコリにまみれたそのロバは、自動車が近づいてきても我関せずと言わんばかりに、移動することを拒んでいました。
男性は何度かクラクションを鳴らしたのですが、一向に動く気配がないので、車から降り、ロバを移動させることにしました。ところが、車から降りた次の瞬間、突如として砂嵐に襲われ、大量の砂粒が直撃! 彼は我が身を守るため急いで車に戻りました。
彼は車の中で砂嵐が過ぎ去るのを待ちました。車の窓という窓は吹きすさぶ茶色の砂によって視界が遮られていたと言います。
砂嵐はあっという間に過ぎ去りました。時間にしてわずか10秒かそこらのできごとでした。そして月に明るく照らされた夜が戻ってきました。しかし、あたりの景色は一変していました。
ロバの姿はもはやそこにありませんでした。車から出たら、道は消え失せており、巨大な断崖が目の前にありました。ロバがいたところは崖っぷちになっていました。もし彼がそれ以上車を走らせていたら、崖から深い谷に向かって落下し、間違いなく命を落としていたでしょう。
ロバは守護動物の一種だったのでしょうか? 彼は幻を見たのでしょうか? だとしたら、偽物の風景はどちらだったのか? 砂嵐に襲われる前に見ていた風景? それとも絶壁……? 答えのない疑問に思いを巡らせながら、男性は車を方向転換し、自宅に向かって走り去りました。