これはアメリカの男性・Gさんの体験談です。
この話は友人のスコットから聞きました。1993年の冬にカリフォルニアで起きたできごとです。
その日の朝は寒く、霧が立ち込めていました。スコットと、彼の父親、そして弟は仕事のために車でブドウ畑に向かっていました。そのころはブドウの樹の剪定をする時期だったのです。スコットはその仕事をひどく嫌っていました。凍えるような寒さの中、一日中休みなしに働くのがいやだったのです。それに、すばやく能率的に仕事をする必要もありました。スコットにはそんな能力がなかったのです。
運転中、道端を這っている男性が目に飛び込んできました。その男は濃い口ひげを生やし、赤のジャケットと擦り切れたジーンズを身に着けていました。3人は車を停めて外に出ました。男がひどい痛みに苦しんでいることが、表情から見て取れました。3人は男に話しかけ、両脚の骨が折れていることを知りました。
1時間以上前に男は車を走らせていたのですが、メンテナンスのために一時停車。ドアを開けて外に出ようとした正にそのとき、霧の中から大型のトラックが走り出てきて、ドアにぶち当たり、その衝撃で両脚の骨が折れたというのです。トラックは事故を無視して走り去り、霧の中に消えていきました。その後、助けを求めて1時間以上、這い続けていたというのです。
スコットの父親は彼の体に毛布をかけ、「助けを呼びにいくから、この場を動かないように」と指示して発車。3人が車を走らせていると、男のものと思われる車が目に留まりました。でも、運転席側のドアは少しも破損していなかったし、ガラスの破片があたりに散らばっていることもありませんでした。車はよい状態だったのです。次に3人は運転席に誰かがいることに気づき、信じられない光景を目にしました。何と同じ男がそこに座っていたのです! 濃い口ひげ、赤のジャケット、髪型、目……すべて同じだったのです。一体これはどうなっているのでしょう!
男が車から出ようとしたとき、ヘッドライトが視界に入りました。トラックが走ってきたのです! スコットの父親はクラクションを強い音で長々と鳴らしました。男はその音に気をとられ、車から出るのが数秒遅れました。次の瞬間、四輪駆動のトラックが霧の中から走り出てきて、男の車スレスレのところを通り、走り去っていきました。その後、3人は男が大丈夫かどうか確かめるため、彼の元に駆けつけました。
男は3人に感謝することしきりでした。もしスコットの父親がクラクションを鳴らさなかったら、彼は車から出て、事故死したかもしれません。彼は丁重に礼を述べたあと、走り去りました。その後、スコットの父親は友人の家に車を走らせ、電話で救急車を呼びました。そして怪我をした男がいる場所に戻ったのですが、彼はもはやそこにいませんでした! 男が這ってその場を去らなかったことは確かです。もしそうしていたら、泥道に跡が残っていたはず。そんな跡はなかったし、あたりには誰もいませんでした! そこにあったのは毛布だけ。
男の魂が、未来に起きる事故を防ぐために、何らかの形でスコットの家族に警告したのです。不思議!