

これはイギリス人男性、トニー・クラークさんの体験談です。
2人のエンジニアが長距離ドライブ中、砂漠のど真ん中に洒落たレストランを見つけて……
1950年代半ばのイラン。トニー・クラークは当地にセメント工場を建設するために雇用されたエンジニアだった。地に足のついた彼は現実的な考え方をする男。カスピ海の近くに位置する小さな町・マンジルからテヘランに向けて長距離ドライブを始めた時、自分が不思議な世界に足を踏み入れるなどとは夢にも思っていなかった。
テヘランまでは240qの道のり。当時、マンジルは人里離れた場所だったので、クラークとイラン人の同僚は、出発前に平たいパンとドゥー(ヨーグルトと水とミントを混ぜた飲み物)しか食していなかった。
2人とも空腹を抱えていたが、ちゃんとした食事にありつける可能性はゼロに近いと諦めていた。道路脇の喫茶食堂で薄いお茶をすすることができれば御の字だろう。

最寄りの町から80qほど離れた場所まで走ってきたら、台地に行き当たった。そこを車で上っていったら、いくつもの岩を危なっかしく積み重ねた陸標らしきものが見えてきた。その向こうに村があり、喫茶食堂が開店しているようだ!
その店は横長の洒落た建物。店内ではイラン人のトラック運転手たちが水パイプを楽しみながらペチャクチャおしゃべりしていた。
アルメニア人の店主は流暢な英語で「私はホヴァネシアンと申します。お食事はいかがですか?」と2人を歓迎した。クラークと同僚は、これでやっと空腹を満たせると、店主の申し出をありがたく受け入れた。ほどなくしてホヴァネシアン氏自身が二つの冷製スープを配膳してくれた。キュウリとレーズンとヨーグルトでできた口当たりのよいスープが疲れた体に染み渡った。その後、米と肉をブドウの葉に詰めた料理と、チェロケバブ(イランの郷土料理)が供された。トルココーヒーで食事を締めくくるころ、2人は満足感もひとしおだった。
生涯で最高の食事を堪能した2人のエンジニアは勘定書を見て自分の目を疑った。バカバカしいほど小額だったのだ。ホヴァネシアン氏から「またおいでください」と送り出された2人は、この店を再訪できるよう、マンジルからここまでの距離を書き留めておいた。
当然ながらクラークはこのすばらしいレストランのことを多くの友達に吹聴した。だが「辺ぴな地域でそれほど美味しい食事が出されるわけがない」と疑ってかかる者は少なくなかった。そんなわけで、3ヶ月後にまったく同じルートをドライブする機会を得たクラークは、この話を信じようとしない同僚(別のイギリス人)を店に連れていき、疑いを晴らすことにした。
状況は3か月前とほぼ同じ。車で台地を上り始めた時、2人は腹ペコで疲れ果てていた。クラークは走行距離を確認し、「あと8qで村に到着する」と同僚に告げた。案の定、やがて小さな集落が見えてきた。その近くには、前回と同じく、岩を積み重ねた陸標があった。
しかし、ホヴァネシアン氏が取り仕切るすばらしい喫茶食堂はなかった。その痕跡すら認められなかった。村人に尋ねても納得のいく答えは返ってこなかった。
「喫茶食堂だって?」 1人の村民はこう言った。「ここには40年ほど住んでいるが、そんなもんがあったためしはないよ。」
謎めいたレストランはどうなったのか? どのようにして「世界最高のレストラン」で美食に舌鼓を打ったのか? クラークはこれらの疑問に答えを出すことができなかった。だが、我々にとって現実離れしたこの話は、クラークにとって紛れもない現実だったのだ。
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