

これはイギリスの女性、Jさんの体験談です。
波止場の近くを散歩していた母娘が体験した不思議なできごととは……?
ある夏、私は母と一緒にタイムスリップを経験しました。2人とも同じことを見聞きしたんです。驚嘆の念とともに、あの日のできごとを振り返ってみたいと思います。
十代の頃、夏になるとよく散歩に出かけたものです。ある日、母と一緒に英国サウサンプトンにあるクイーンズテラスにやってきました。ここは波止場の向かい側に18世紀の家々が建ち並んでいます。このあたりの道路は港に行き来する乗客やトラックで年中無休で混雑しています。私たちは角を曲がってテラス・ハウス(長屋式家屋)が建つ通りに出ました。いくつかの家は今では店舗やオフィスに改造されていますが、二階には出窓がありました。

どういうわけか、角を曲がったとたん無音状態になりました。車の音も鳥の声も聞こえなくなったのです。その代わりにハープシコードの妙(たえ)なる調べが聞こえてきました。その音色は二階の出窓から漏れていました。
リボンによって髪を後ろで束ねた男性が頭を振りながら演奏に没頭していました。2人で数分ほど耳を傾け、「すばらしい演奏ね」とコメントして、散歩を続けました。
通りの端まで歩を進めた私たちは、もう一度彼の演奏を聞きたくて、来た道を戻ることにしました。この頃には交通音などの騒音が戻っていました。先ほどの場所までやってきた私たちは驚きのあまり立ち尽くしました! 窓は木の板で塞がれており、建物は賃貸物件になっていたのです!
たとえ誰かが電光石火の速さで窓に板を打ち付けたのだとしても、金槌でガンガン叩く音が聞こえてきたはず。私たちは少しの間 18 世紀にタイムスリップしたのだと信じています。