これはアメリカ、ニュージャージーにお住まいのマルコさんの体験談です。
2004年のことです。週末に私は妻と連れ立って映画を見に行くことにしました。このころ『ヘルボーイ』が公開されていたので、午後2時45分の回を見ることにしました。
切符を買ったあと、入り口まで行って、係員の男性に切符を手渡しました。彼は切符をふたつにもぎり、ひとつを私たちに渡しました。そのあと売店でポップコーンとソーダを買い、お目当てのスクリーンに向かいました。そこはマルチプレックスの映画館で、複数の映画が上映されていたのです。
上映室に足を踏み入れたときは2時35分ごろでした。映画が始まるまでには10分ほどの余裕がありました。私は遅れて入場し、暗闇のなかをまさぐりながら座席を探すことが嫌いなのです。ところが、すでに上映は始まっていました。妻が「予告編をやっているようね」と言いました。座席を探し、腰を下ろしたところで、何かがおかしいことに気づきました。スクリーンに映っていたのは本編だったのです。10分ほどして映画が終り、人々が退場し始めました。私たちは人の流れに沿ってロビーに出たあと、時間を確認しました。何とそのときの時間は4時45分ごろでした!
ひょっとしたら『ヘルボーイ』は複数のスクリーンで上映されており、部屋を間違えたのかと思って係員に尋ねましたが、スクリーンはひとつだけだといわれました。割り切れない私たちは切符切りの男性のところまで足を運び、私たちを覚えているか尋ねました。彼は私たちのことを覚えていました(当時、私はガンの化学療法を受けたせいで頭髪がなかったので、記憶に残っていたのでしょう)。切符切りの男性は「覚えていますよ。2時間ほど前にいらっしゃいましたよね」と言いました。
私たちは瞬時にして2時間を失ってしまったのです!これはまったく割り切れないことです。そのときは平常時と何ら変わったことはなく、変な気持ちになることもありませんでした。ポップコーンとソーダは手つかずのままでした。妻と一緒だったのは幸いでした。彼女は現実的な女性で、この種の現象にまったく興味を示さないタイプです。もし彼女がいなかったら、私の気がおかしくなったということでかたづけられていたでしょう。
ちなみに、結局私たちはお目当ての映画を見ることができました。
実はこのできごとが起こった一週間ほど前にも、私は不思議な体験をしています。
映画好きの私は家でDVDを見ることにし、行き着けのレンタルビデオ屋に向かいました。スタッフとはすっかり顔なじみになっており、女性のスタッフが私に付き添ってお気に入りのDVDを探すお手伝いをしてくれました。結局ユーワン・マグレガー主演の『ビッグフィッシュ』を借りることにし、家に持ち帰りました。
翌日、DVDを返しにいこうと思ったのですが、どうしてもそれが見当たりません。そこらじゅうを探し回ったのですが、影も形もないのです。仕方なく代金を払うことにし、店に向かい、事情を説明しました。店員は同意し、私の記録を探そうとしたのですが、そこで不思議なことが起こりました。私がそのDVDを借りた記録がコンピュータにまったく残っていないというのです。店員はあらゆる手を尽くして私の記録を探そうとしましたが、見つけることはできませんでした。こうして私は代金を払わずにすみました。でも私は確かに前夜、映画を見たのです。
