子供たちの間で「そこなし沼」と呼ばれる沼の奥に白いワンピースを着た女の子がいて……
俺の親父は教師で俺は小学校二年まで教員住宅に住んでたんだ。俺のウチの裏は林になっていてそこに「そこなし沼」って俺らの間で呼ばれてた沼があったんだ。ほんとはちょっとした水溜りのようなもんだったんだけどその周りではクワガタがたくさん捕れるんでよく友達と遊びに行ってた。
ある日の事いつものように友達とクワガタ捕りにいくとその沼の奥になにやら白い人影が見える。白いワンピース着た中学生くらいの女の子。普段人気のまったくない所だし道なき道を泥まみれになりながらすすまないと来れないような場所だってんで不信に・・・は思わなかった^^; 小学生だしね。
「遊ぶ?」って尋ねるとその女の子は「ちょっといい所しってるんだ。カエルがいっぱいいて面白いよ」って言って俺の手を引っ張って工事現場みたいな所に連れて行かれた。近くには田んぼがあって確かにカエルがウヨウヨいた。その女の子とカエル捕まえたりして遊んでるうちに遅くなったんでその子と別れて家に帰る事にした。
初めて来た場所とはいえ「そこなし沼」からはそう離れてなかったし、沼までたどり着けば後は勝手知ったる土地。暗くなり始めてはいたけど10分もあればつけるだろと思ってた。んで沼も通りすぎて我が家が見えてきた。
「ただいまー」
いつものように玄関を開けるとなんだか様子がおかしい・・
まだ帰ってきてないはずの父がいる。いつもの我が家とは違う変な空気。
「お前・・・・何処いってたの!!!」
突然母に怒鳴られた。わけがわからない。
「探したんだから!近所中で!」
時計を見てみるとなんと深夜の二時。外を見て愕然とした。
闇。
とても林の中を歩いてきたとは思えないくらい真っ暗。さっきまでちょっと日が落ちかけたくらいだったのに・・
結局そのあとさんざん怒られてこの事は俺が道に迷ったって事でかたがついた。あまりに不思議な出来事だったんで俺と一緒に遊んでた友達にも聞いてみた所「昨日お前と遊んでないじゃん」と言われた。確かに思い出してみても友達との記憶は沼までで途切れてるんだよね・・そこからはなぜか俺と女の子との記憶しかない。沼から帰ってきた時も一人。
親にも聞いてみた。
「全然知らなかった・・・気持ちわる・・・あの時さあビービー泣くと思ってたんだよ。怒った時さ。でもあんたなんかボーっとしてるんだよね。確かにちょっと気味悪かったよ。それにあそこ工事現場も田んぼもないよ。唯の山だもん」
俺が深夜遅く一人で帰って来て様子が変だったって所までは事実っていえるんだけど・・その他の記憶はいったいなんなんだ。