これはあるアメリカの男性(匿名希望)の体験談です。
ある夜、車を運転して、ダラス(テキサス州の都市)からタスカルーサ(アラバマ州の都市)に向かった。真夜中に出発。2人の友人が寝ている中、一晩中運転した。
午前4時を回ったころ、ガソリンはタンクの1/4しか残っていなかった。つまり、160キロぐらいしか走れないということだ。一番近い町までは約 145 ㎞ あるので、到着できるかどうか心配だった。
その町に着く前に、地図に載っていない田舎町に入った。数軒の家とガソリンスタンド、コンビニがあるくらいの小さな町。
ガソリンスタンドの店に入り、給油するために 50 ドル(約 7,200 円)を店員に渡した。その店員はとても背が高く痩せた黒人の男だった。まるで骨に皮膚が巻き付いているような痩せ方。背丈は少なくとも2メートルはあったと思う。不気味な雰囲気を漂わせていた。
その男は俺を見て、カウンターに寄りかかり、外を眺め、再び俺に視線を向けた。そして俺に50ドルを返し、帽子を手渡して、こう言った。
「君はいい若者みたいだな。夜中にそんな姿でここにいるのはヤバい。帽子をかぶり、すぐ車に戻って、次の町でガソリンを入れろ。」
そんな姿というのは俺が白人であることを指していたと思うが、確信はない。とにかく俺は混乱し、「次の町に着く前にガソリンが切れるかもしれない。だからここに寄ったんだ。この町が存在することすら知らなかった」と言った。
すると男は「存在しないよ。ほら、この缶には8リットルぐらい入ってる。あと25~30キロ走って、このガソリンを入れればいい。お願いだから今すぐ移動してくれ」と急かした。その時点で俺は質問をやめて、立ち去った。
タスカルーサからダラスまでの帰りは昼間だったので、途中にあの店に立ち寄り、8リットルが入った缶を返そうと思った。もう察しがついたと思うが、あの町は見つからなかった。まるで週末に消滅してしまったかのように……。
このできごと以来、地図に載っていない小さな町に立ち寄ることを頑なに拒否する自分がいる。ガソリンスタンドの従業員が俺を何から救おうとしてくれたのか知らないが、とにかく彼は大急ぎで俺を店から追い出し、ガソリンを無料で提供してくれた。