15年越しの再会

アメリカの少年が山中の森を歩いているとき、成人男性に遭遇、驚いたような表情で見つめ合った2人。あの人は誰だったのだろう……?

これはアメリカの男性・ジャックさんの体験談です。

米ワシントン州西部のカスケード山脈で生を受けた僕は、昔からアウトドアが大好き。父と一緒に山を探検したり、釣りをしたり、狩りをしたりして、幼少期のほとんどを過ごしました。


By Bala from Seattle, USA – Bleeding SkiesUploaded by X-Weinzar, CC BY 2.0

なのでカスケード山脈のことはよく分かっています。表から裏まで知り尽くしている場所もいくつかあります。その 1 つはゴブリン渓谷と呼ばれる、小川が流れている場所。子供のころ、釣りや射撃をするために、よくそこへ車で行ったものです。その辺りで採れる岩石には、半分に切って磨くと、洞窟内から山を眺めた風景画のように見えるものがあります。僕たちはそれらの岩石を「絵岩」と呼んでいました。

父の友人がアートギャラリー/鉱物店を経営していたので、その店に石を1個2ドルで卸していました。10代前半の子供にとっては大儲けでした。

この辺りで人はほとんど見かけません。数年の間に僕が見たのはたった2人。1人は狩猟管理官。僕たちが射撃練習をしていたときに銃声を聞き、大丈夫かどうか確認するために足を運んでくれたのです。そしてもう1人については……今からお話します。

僕が14歳くらいのとき、小川で拾い集めた「絵岩」をバックパックに詰め、父のトラックまで徒歩で運びました。その途中、年のころは30歳くらいの男性に出会いました。

こんな人里離れた場所で誰かに遭遇するのはめったにないことなので、かなり驚きました。その男性も驚きを隠せないようでした。2人の間の距離が縮まるにつれて、彼はますます驚いているように見えました。でも通り過ぎたときは無言。ただただ僕をじっと見つめるばかりでした。何と言ったらいいのか分からず、言葉に窮しているように見えました。すれ違った後、「まるで自分の家族のようだ」と思ったことを覚えています。顔かたちが家族に似通っていたのです。

父のもとに戻った僕は、石をトラックに積んでから、男性を見かけたかと尋ねました。父は見ていないと答えました。それ以来、この遭遇のことは脳裏に焼き付いて離れませんでした。


それから15年の月日が流れました。帰郷した僕は、懐かしさを味わうためにゴブリン渓谷に行ってみることに。父がいつも駐車していた場所に車を停め、森の中を歩いて小川まで下っていきました。その途中で、心の底から震撼(しんかん)させられるものを目にしました。森の中を半分ほど進んだところで、小川から別の誰かが歩いてきたのです。14歳くらいの少年でした。

少年は重そうなリュックを背負っていた。近づくにつれて、その少年が子供時代の僕にそっくりなことが分かり、大きなショックを受けました。通り過ぎるときに話しかけようとしたのですが、適切な言葉が思いつかなかった。

少年はそのまま歩いていきました。僕は少し歩いてから立ち止まった。すべてが腑に落ちたのです。あの少年は15年前の僕で、少年のころ出会った男性は今の僕だった! 深い森の中で僕は振り返りました。少年に話をしようと思ったのです。トラックを停めたところまで走って戻りましたが……少年は見つからなかった。

次に僕は踵(きびす)を返し、元来た道を戻って小川まで走っていきました。若かったころの父が岸で釣りをしているのではないかと期待したのです。しかし……父もいませんでした。

その後、実家に戻ったのですが、このことは友人にも家族にも話さない方がいいと判断しました。あまりにも突拍子もない話なので、誰も信じてくれないだろうと思ったのです。