吸血鬼が集うレストラン

長距離運転中に立ち寄ったレストランには、包帯を巻いた客が異常に多く……

これはアメリカの男性・DDVYogaer さんの体験談です。

昔、僕の両親はオハイオ州に競馬場を所有し、経営していたのだが、住居はオハイオ州の隣にあるペンシルベニア州南東部にあった。競馬場へは高速道路を使わなければまともな時間で行けなかった。ある日、母と妹と僕は、仕事で競馬場に向かった。義父は独りで別の車を運転して競馬場へ。というのも、機材を運ぶためにトレーラー(荷車)を牽引しなければならなかったので。

高速道路から降り、通行料を払って一般道に出た僕たちは、こじんまりしたショッピングセンターに入った。色あせたパステルカラーの建物が立ち並ぶ、裏さびれた場所。ただ、ダイナー(食堂)があったので立ち寄ることに。4時間前に家を出てから何も食べていなかったんだ。

料理はまずくて、全く味気なかった。しかも、不気味なことに、他の客が一人残らず僕たちを始終見つめていた。窓はいくつかあったものの、少量の日光が差し込む程度で、薄暗かった。停電時のデニーズのような感じ。それに、包帯を巻いている人が異常に多いことに気づいた。僕たちに話しかけてくれたのは、注文を取ったウェイトレスだけ。その女性が最後に会計もしてくれた。

母も妹も僕も二度とこの店に来たくないと思った。またここで食べるくらいなら空腹を抱えている方がまし。そこで、車内にしまっておいた手帳に出口を書き留めておいた。二度と同じミスをしないようにするためだ。

数時間後、競馬場に着くと、義父が「ドライブはどうだった?」と尋ねてきた。「とりたてて変わったことはなかったが、ダイナーが最悪だった」と話したら、義父はすごく興奮し、「ゴーストフード(幽霊食)を食べたんじゃないか、ダイナーの人たちは吸血鬼だったんじゃないか」などとまくし立てた。10分くらいその話が止まらず、妹が気まずそうだったので、母は義父を説得してその話をやめさせようとした。釘を刺された義父は口を閉ざした。

週末に催された競馬も終了し、いよいよ帰り道だ。義父は往路を独りで運転してきたので、一緒に行かないかと僕に尋ねてきた。僕は「いいよ」と快諾。

競馬場を発ってから2時間後、義父は高速を降りた。出発前にとんでもない量の朝食を食べたのに、もうお腹がすいたのか? 変だなといぶかっているうちに、義父が例のダイナーに向かおうとしていることに気づいた。自分の目で確かめたかったのだ。義父は料金所の係員に、出口の近くに食堂があるかどうか尋ねた。係員によると、食堂はあったが焼け落ちてしまったと言う!

何という偶然! 2日半前に食事をしたダイナーに不慮の事故が起こるとは! 超常現象の話よりも、こっちの方が興味をそそられる。そういうことならぜひ見てみたい。

そんなわけで、義父は例のパッとしないショッピングセンターに車を向けた。ダイナーはただただ焼け焦げた廃墟と化していた。ひどく損傷していたが、周囲がきれいに清掃されていたのは印象的だった。

見学も終わり、僕たちは高速道路に戻ってきた。義父が先ほどの係員に「あそこにダイナーがあったって言ってたよね?」って聞くと、係員は「さっきも言ったように、焼け落ちたんだ」と答えた。義父が「原因はもうわかったの? 油に火が燃え移ったとか、そういうこと?」と聞くと、係員は怪訝そうな顔つき。「火災はここ2、3日前のことなんだろ? 捜査はまだだし、ニュースにも出ていないよね?」と尋ねたら、係員はこう言った。「原因は分かってるよ。8年前に火災が起きた時、ニュースで報道されたからね。」

あなたはこの話がバカバカしいと思うかもしれない。どっかで聞いたことのある話だと思うかもしれない。似たような話は山ほどあるからね。だが、僕は確かにこの体験をした。同じ高速の出口、道路からの距離も同じ、建物も例のダイナーを除いてすべて同じだった。誰も信じてくれないだろうから、普段は話さないようにしている。


時間旅行
今回のお話はいかがでしたか? とても奇妙な話で、単純なタイムスリップ現象とは一線を画しているように思います。ダイナーに包帯を巻いた客が多くいて、じろじろ見られていたという点、食べ物に味がなかったという点……特にこれらの2点が気になります。3人は過去にタイムスリップしたのではなく、異世界にさまよいこんだのでしょうか……?