渋谷の歩道を歩いていたら、清涼な鈴の音が……
これは日本の女性、鈴さんの体験談です。
平成7年の初夏の頃の日中、渋谷での出来事です。
私は渋谷駅から西武百貨店のむかい側の歩道を原宿方面に一人で歩いていました。少し暑いくらいで歩道には人がいっぱい、4車線の道路は渋滞していました。
西武百貨店A館のむかいのマクドナルドのあたりでチリンと鈴の音が聞こえました。はじめは扉が開く時に鳴ったのかとか、風鈴かなとか考えているとまたチリンと聞こえました。立ち止まり音源がどこだろうとキョロキョロしていると3回目のチリンという音が。
その瞬間です。ビルや渋滞している車や音が消え、目の前には人の背くらいある緑の草が生い茂った丘、そのまん中に凄く細い道が1本、そこをのぼっている人、風でしなる草、頂上には小屋のようなものが現れました。
ほんの数秒だと思います。すぐにいつもの光景に戻りました。そしてまたチリンと聞こえました。今度はその音の音源を見つけました。それは道路のむかいの西武百貨店の前にいた托鉢僧です。間違いなくあの鈴の音です。結構離れているし車はうるさいのに透き通った音でした。あの凄く細い道は大体道玄坂あたりです。あの光景はずっとずっと昔の渋谷だったのでしょうか。一瞬の白昼夢でしょうか。
人間はじめのよいものを思い出して、もとの純粋な状態に戻りなさいとの仏様の教えなのではないでしょうか?