不思議の国インド

タクシー運転手のバイトをしていたインド人青年が体験した不思議なできごととは……?

これはアメリカの女性、Lさんの体験談です。

人生では時おりひどいことが起こる。時には不思議なことが起こる。

私の夫はインド出身ですが、この国ではこんな考えが一般に受け入れられています。そうは言っても、不安を催すような不思議体験は……不安を催します! 最近、彼がそんな体験談を話してくれました。私と出会う前に経験したできごとだそうです。

あるとき、彼は大学を休み、デリーでタクシー運転手のバイトをしていました(家族には内緒で! もし彼のお父さんがこのことを知ったら発作を起こしていたでしょう笑)。ある夜、彼のタクシーに友人 11 人が乗り込んできました(車の定員は 5 人なのに!) そして彼は、デリーに隣接するもう一つの大都市、グルガオンに向かってドライブしました。というのも、車に乗り込んだ 11 人のうちの 1 人がグルガオンにアパートを借りていたからです。

夜も遅くなり、みんな眠ってしまったので、彼はグルガオンから北に約 3 時間のところにあるクルクシェトラ市にある大学に戻ることにしました。彼はこのルートを数え切れないほど運転してきたので、道を知り尽くしていました。いくつかの脇道を通れば高速道路につながり、目的地までほぼまっすぐに行けるということを分かっていました。

よく知っているルートに沿って運転していたのですが、突然、自分たちがド田舎の道にいることに気づいたといいます。そのとき彼はハリヤナ州のどこかを走っていると思ったそうです。奇妙なのは、インドでは、どんな田舎を走っていても、大体 10 キロメートルごとに小さな村を通過するということ。彼は小さな村の出身なのですが、インドではそんな村が風景のいたるところに点在しているのです。インドの人口は約 15 億人で、国土面積は米国の約 3 分の 1。どこにでも人がいるということです!!

非常に長い間運転しましたが、村にも、道路を歩く牛にも、他の車にも遭遇しませんでした。とてもとても静かだったと言います。道の両側に沿って木々が生い茂り、木々の向こうには野原が広がっていた。家も建物もなく、人っ子一人いない。道路標識もない。村の境界を示す標識もない。そこにあったのは、彼と、眠りこけた友達、彼の車、木々、そして野原だけ! 不安を抱かずにはいられませんでした。

およそ 1 時間後にようやく村が見えたとき、彼は安堵の吐息をつきました。そのとたん、自分たちが現在どこにいるのかを認識し、高速に乗ることができたそうです。

ひょっとしたら彼は異世界、もしくは異なる時代にさまよいこんだのかもしれません。彼もそんな考えに同意しています。ともあれ、彼はあの人気のない孤立した道を二度と見つけることができませんでした。

インドは、この世と異世界を隔てるベールが西洋に比べてはるかに薄い場所のように思えます。私たちが理解できないことは想像以上にたくさんあるということ。インド人はそのような考えをずっと受け入れているようです。しかし、ほとんどの人はそのことをあまり気にしていないように見受けられます。今年は彼と一緒にインドに行く予定になっているので、ワクワクしています。ただ、旅行中に別世界のような道にさまよいこまないことを願っています。