夜、レストランを探してマレーシアのジャングルの中をドライブしていたら……
これはアメリカの男性、Tさんの体験談です。
これは10年から15年ほど前に、マレーシアのサイバージャヤで体験したできごとです。このころ、僕はアメリカの会社の駐在員としてマレーシアに住んでいました。
サイバージャヤ:マレーシア の首都・クアラルンプールの郊外都市で、マルチメディア・スーパーコリドーと呼ばれる総合開発地域に含まれる新興都市
当時、僕の勤めていた会社がコールセンター(顧客電話窓口)をマレーシアに開設すべく準備を進めていたので、米国の就業時間に合わせて夜勤をする毎日でした。食事時になったら近くのレストランに足を運んでいたのですが、その店が数日間閉鎖されることになりました。同僚が「別の店を知っている」と言ったので、みんなでそこに行くことになりました。
ジャングルに向かって車を走らせていると、街灯がまばらになり、辺りは暗くなってきました。1つの街灯を過ぎたら、次の街灯は 5 キロ先! ドライバーが道に迷っていることは明らかでした。彼はお目当ての食堂を見つけるのを諦め、事務所に戻る道を探していたのです。
ジャングルの中を走っているうちに、ある家に行き当たりました。普通の民家だったのですが、家の前にカウンターが設置され、周辺は灯りで照らされていました。僕たちは道順を聞くために車を停めました。
結局のところ、そこは野外レストランであることが判明! 地元の人々に食事を提供する屋台だったのです。僕たちが着いたとき、店の人々は閉店の準備を進めていたのですが、わざわざ営業時間を延長してくれることになりました。
そんなわけで、ジャングルのド真ん中で、絶品の作り立てインドシナ料理を堪能しました。料金を払おうとしたら、「お代はいらない」と言われました。閉店間際で料理が一品しかなかったので、お金を請求することに引け目を感じたのです。そこで僕たちは20ドルのチップを置いていきました。店の人はオフィスに戻る道順まで教えてくれました。
1 週間後、またそこに行くことにしました。来た道を逆戻りしていったのですが、いくら探しても店は見つかりませんでした。レストランがあった場所には木々が生えているだけだったのです。