これはアメリカの女性、S さんの体験談です。
90年代に、友人がテキサスのメアリー・ハーディン・ベイラー大学への小旅行に同行しないかと誘ってきました。その大学は友人の母校。そのとき彼女は教授と話をする必要があったのですが、「すぐに終わるから一緒にいきましょう」と誘われたのです。私は他にすることがなかったので、同行しました。
到着して大学の敷地内に入ると、友人はとある建物の前に車を停めました。その建物の前の道は石畳。友人は「車の中で待っててね。すぐに戻ってくるから」と言い残して教授に会いにいきました。
車に座っていると、男女入り混じった学生たちが石畳の上を歩いているのが見えました。女性たちは長いドレスを着て、大きなかわいい帽子をかぶっていました。日傘をさしている人もいました。男性は暗い色か明るい色のスーツを着て、帽子をかぶり、中には杖を手に持っている人もいました。学生たちは1900年代の服装をしていたんです。何かの演劇が行われているに違いないと思いました。
ようやく友人が戻ってきたので、「あそこで何か出し物をやっているみたいだから見にいきましょう」と提案。友人は私を不思議そうに見て、「何の出し物？」石畳の方を指さしたら、彼女は「何のことを言っているのか分からない。何も見えないけど……」
私は車から降り、友人を後ろに従えて、石畳に向かって歩いていきました。案の定、石畳に足を踏み入れたころには何もありませんでした。学生たちがどこに行ったのか見回しましたが、何も見当たりません。背後を歩いていた友人が追いついた時、困惑しきった私がいました。
小さな壁に目をやると、そこには 1900 年代の人々の名前が書き連ねてありました。多分、学生の名前だと思います。あの時、私の目に映った光景はリアルそのものでした。唯一の違いは、学生たちがもっと前の時代の人々だったということです。