これは東欧の男性、O さんの体験談です。
10年前の夏、僕は東欧の山間部で夏の休暇を過ごしていました。おばがこのあたりに家を所有し住んでいたので、毎年ここを訪れお世話になっていたんです。毎年来ていたので土地勘はバッチリでした。
何もすることがない典型的な夏の日。あまり人が通らない道を通り、キノコを探すために森に入ることにしました。
森から出ると、空気が違って感じられました。何かが大きく変わったような気がしたのですが、具体的にどう変わったのはわかりませんでした。怖くなってきました。道に沿って歩いていると、この地域に住んでいる男性の家が見えてきました。そして……ここから話は奇妙になります。
その家は廃屋のように見えました。木材は腐っていて、ドアの板は崩れていました。僕が見た限りでは、家の中は散らかっていて、皿などが割れていました。ひどく怖くなりました。家路を急ぐ中、道や、そばを流れる川も、様子が変わっていることに気づきました。いつもの見慣れた道や川ではなかったんです。でも、最終的に道も川も元に戻り、そこからすべてが正常に復帰しました。
僕はこの不可解なできごとを説明しようとしました。あの家に住んでいた男性は妻と喧嘩して別れ、出ていったのかもしれないと思いました。ところが、家に帰っておばにこの話をしたら、「そんな話は聞いてないわよ」と言われました。
この話にはまだ続きがあります。
それから10年が経ち、僕はまた山間の地を訪れました。舗装された川床に沿って道を歩いているとき、この道に見覚えがあることに気づきました。10年前に不思議体験をしたときに見た道と、今見ている道が同じであることに気づいたんです。
泥だらけの地面には大きな穴が開いていました。10年前には説明がつかなかったのですが、今となっては穴が開いている理由がわかりました。川床を舗装するために地面から石を運んだので、穴が開いたということです。
そして、あの家がどうなっていたのか、もうおわかりですね。そこに住んでいた男性は亡くなり、廃墟になっていたのです。