これはイギリスの女性、エリザベス・スミスさんの体験談です。
1950年1月2日。当時 55 歳だったエリザベス・スミスは、イギリス・スコットランド北東部にある「ブリクン」という田舎町で催されたカクテル・パーティーに出席した。彼女はその町からおよそ 16 キロメートル離れたリーサム村の住人だった。
何杯もカクテルを飲み、パーティー会場を後にしたとき、夜はすっかり深まっていた。運転条件は極めて悪かったが、自宅に向かって発車。3 キロメートルほど走ったとき、雪が降り始めた。雪はすぐに雨に変わった。
道路には街灯、標識、路面標識がなかったため、エリザベスは方向感覚を失い、溝に落ちてしまった。幸いにも、彼女はこの小さな事故で何の怪我も負わなかった。この時の状況について、彼女は次のように語っている。
「運転中に気を失って事故を起こしたわけではありません。怪我は負わなかったし、脳震盪(のうしんとう)を起こしたわけでもありません。」
車が動かなくなったので、愛犬をつれて徒歩で帰宅しなければならない。そこから自宅まではおよそ 13 キロメートルの道のりだ。エリザベスは気温0度前後の寒さに耐えながら、暗い田舎道を歩いていった。雨が降り、周囲の環境が荒涼としていたため、近道は避けることにした。というのも、近道は暗い森を通ることになり、非常に不安になるからだ。
時刻が午前 2 時を回り、リーサム村まで約 1.6 キロメートルのところまで差しかかった時、遠方にいくつかの光が動き回っているのが目に留まった。近づくにつれ、燃える松明を手にした人々を見分けられるようになった。
松明を手にした男たちは、こげ茶色のチュニックのような服をまとい、脚にタイツをはいていた。地面には多数の死体があった。エリザベスの肩に止まった子犬がうなり声を上げる中、男たちは地面に横たわった死体を調べていた。
このときの状況についてエリザベスは次のように説明している。
「その人たちが自分の身内を探していたことは明らかでした。かがんで遺体をひっくり返し、身内でないことが分かると、うつぶせの状態に戻し、次の人に移るという行為を繰り返していました。多分、身内を埋葬しようとしていたのだと思います。」
彼女は西暦 685 年 5 月 20 日に起きたネックタンスメアの戦いの余波を目撃したようだ。今日ではほとんど忘れ去られているこの戦いは、スコットランド先住民のピクト人と、当時ブリテン諸島で最強の支配者であったノーサンブリア王エクフリスが指揮するサクソン人の侵略軍の間で勃発した。戦いはピクト人の勝利となり、エクフリス王は死亡、侵略軍は解散した。こうして、スコットランド王国はサクソン人の支配から独立することができた。