黒マントの男

田んぼで独りザリガニ釣りをしていた少年。ふと気づくと、脇に黒マントの男が立っていて……

これはある日本人男性の体験談です。

俺が小学生坊主の3年の時、夏休みで母方の田舎に帰省した時の出来事。当然、友達も居ないので、一人で田んぼでザリガニ釣りをしていた。ふと気が付くと、黒づくめの男の人が自分の脇に立っていた。顔は思い出せないが、黒いマントを着けていた。真夏にずいぶん暑そうなカッコをしているな~と思った記憶がある。その男と随分長い間、話していたと思うが、内容は覚えていない。

日も暮れてきて、私が帰ると言うとその男が笑いながら言った。「サヨナラ、君はハタチになったらホッサを起して死ぬから・・・」 え?と思った時に田んぼのあぜ道にひとりで突っ立っていた。 周りに隠れる場所なんかない、夢でも見ていたのか、とても不思議な気分だった。

家に帰り母親に話した。ハタチって何?ホッサって何? 変なおじさんが、僕がハタチで死ぬって言ってたよ。母親は、この子は何言ってんだかという感じで笑い飛ばした。

そして私もそんな事はすぐに忘れてしまった・・・二十歳の誕生日まで・・ 二十歳の誕生日の一週間前にその事を思い出した。というのも、その出来事を夢で見るようになったからだ。毎晩夢にその男が現れて、発作で死ぬよと私に告げる。気にはなったが、朝起きて、日常が始まるとそんな夢の事なんて すっかり忘れて、大学の友人と遊びまわっていた。

そして20歳の誕生日の日、彼女が祝ってくれた。「20歳の誕生日おめでとう~かんぱ~い」。その言葉を聞いた後、私は手足が震えだした。そして、記憶が無くなった。

気が付いたのは病院でだった。親や友達や彼女がいた。 私は突然、てんかんで泡を吹いてぶっ倒れたそうだ。その後、そんな症状が出たのは後にも先にもその1回だけだ。母親にその事を話すと、そういえば、そんな事言ってたわね~ と不思議がっていた。父親は、そういえば、そのころテレビで催眠術がはやっていたな~ お前へんな暗示でもかけられてたんじゃないか?といい加減な解釈をしている。

その後その男は夢にも現れないし、思い出そうにも思い出せない。ただ、黒いマントを着けていたという事しか思い出せない。いったい何だったのか、もうすぐ40に手が届くが、私の人生の謎である。

出典:子供の頃の変な記憶☆その8

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